タイリクフタホシサビカミキリ

何度か挑戦している本種に再挑戦。
使用機材:https://ita.hatenadiary.jp/entry/20180816/p2
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何度か挑戦している本種ですが、これまで見当違いの場所を探してたようで、記録のある地名付近をstreet viewで探していると桑の多そうな場所を発見。8月下旬に赴いて実際桑がたくさんあることを確認し、枯れ枝を掬ってみましたが発見できませんでした。むかしは一帯で養蚕をしてた名残で畑の周囲に生垣のように桑が残っています。また、邪魔になる枝を折ってあるので枯れ枝が常時供給される好条件です。9月になってからがいいというアドバイスをいただき、またこちらの論文
http://www.kantoforest.jp/papers/pdf/66-1-A6.pdf
とか中国の解説を読むと年中ダラダラ発生してるようで、再チャレンジしました。
まあしかし、よさげな物件を掬ってもなかなか落ちません。作業しておられるおっちゃんに挨拶しつつ掬って周ること一時間ほど、孤立した木の枯れた部分からようやく落ちました。

タイリクフタホシサビカミキリ★


クワの枝に乗せて。

ワモンサビカミキリ

これも桑から落ちました。藤や葛につくとおもってたけど。

dorsalis or honesta

ところで、なんで台湾や中国本土にいるカミキリが神奈川にいるのか。よくわかりませんが1970年ごろから山梨、長野、東京、神奈川などで記録があります。桑を中国から持ってきてそれについてた、とかですかね。養蚕の衰退とともに記録は減ってきて、東京はたぶん50年ほど記録がないと思います。しかも50年前の記録というのが町田市で虫屋さんの自宅にいたというもの。灯火に来たのか、あるいは採集地からもってきちゃったのか。いずれにせよまとまって桑が残っている場所がないと再発見は難しいでしょうね。周辺の、桑がボチボチ生えている程度の場所では6月に掬ったらニイジマチビばかりでした。昔はカイコに食べさせたあとの桑の枯れ枝が大量にあったわけで、在来種とニッチの競合がおきず広まったんじゃないでしょうか。
8月に歩いた時は、どこかの畑は沖縄から来た方がやってるよ、と地元の方に教えてもらいました。だとするとタイリクじゃなくて沖縄のフタホシサビか!という疑念が生じます。この二種はかなり似ていて、違いは肩の部分の張り出し方のみです。以下の図は
http://db.ffpri.affrc.go.jp/longicorn_jp/Lamiinae/browserecord.php?-action=browse&-recid=167
および
https://en.wikipedia.org/wiki/Ropica_dorsalis#/media/File:Ropica_dorsalis_(34132096754).jpg
から改変して合成。左がタイリク、右がタダフタホシ

肩の形状からしてタイリクでよさそうです。あと、オスも採れてるようなので。沖縄のはメスだけの単為生殖。
この日は640さんもご夫婦で遠征に来られるとのことで現地でお会いして歓談。まだ叩き始めで落ちないとのことでしたが、現物をお見せしてから一度叩かれた枯れ枝をもう一度叩かれて、「あ!いた!」となりました。めでたし、めでたし。
なかなか落ちないということですかね。試しに持ち帰った個体が産卵しないか桑の枯れ枝と一緒にケースに入れて飼育してますが、枝を叩いても落ちませんね。気温にもよるんでしょうけど。

参考文献

  • 甲虫ニュース006: 日野春で栗から。30. vi.1968。
  • 甲虫ニュース012: 韮崎駅の蜘蛛の巣。5. iv. 1970
  • 月刊むし010:甲府市湯村 13.xi.1969, 町田市金森 27.xi.1971

追記

メスのようだったんで、桑の細い枯れ枝(幼虫の食べた形跡なし)と共に飼育。1月ほど生存し10月末まで生きてました。
その間も枝から細かい粉が落ち始め産卵したのだろうと判断、待っていると11月末に第二世代が誕生しました。
その後も12月末までに4個体が羽化しました。オス・メスどちらもいて、親より大型でした。