阿蘇山から宮崎へ

使用機材:https://ita.hatenadiary.jp/entry/20180816/p2
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特定の季節に全国からカミキリ屋が集まる有名産地がいくつかあります。そうした有名山地はこれまでにだいたい訪れ季節の風物詩を楽しんできましたが、まだ訪れてない場所に阿蘇山があります。独特の草原環境で吹上げによりムナコブハナ、キュウシュウヌバタマハナ、ベニハンノキが採集されます。シーズンが梅雨時で難しいけど、今年は行ってみることにしました。
現地は2年前に噴火で通行止めになったりしてます。また、数日前に訪れた知人が全くダメだったという情報も。まあそういうこともあるかな、とあまり気にせず出向きました。天気予報もあまり良くないけど、小雨くらいなら大丈夫とのこと。
初めて訪れる熊本空港に着いてみると、小雨。雨雲レーダーでは市街地は多少雨量が少なそうなので、まずは寄り道して桑畑で狙えるカミキリ2種を狙ってみました。キバネアラゲとムネホシシロ。あらかじめストリートビューで桑のある場所を三箇所ほど見つけ、地図を作りました。しかし一箇所は完全に整地され更地になってました。うーむ。
二箇所目はかなり多くの桑がまだありました。

トラフカミキリ

生垣のような桑にて発見。

キバネアラゲカミキリ★

大きめの桑もあり、雨上がりに枯れ葉を掬うとポロポロと三頭ほど落ちました。
地味ですが自己初で気力充填。キイロアラゲとキバネアラゲ、いつもどっちがどっちだったか迷います。
ムネホシシロの方は落ちず。深追いせず阿蘇に向かいます。

阿蘇山

現地着。観光客もいません。結構な雨で吹上げは無理。下見に徹します。長靴とゴア雨具完全装備で吹上げポイントやその下のエリアを探索。ムナコブハナは苔むしたノリウツギに産卵にくるので発生木を探しますが見つからず。とあるカミキリ写真集ではこの場所でそのようなノリウツギで撮影された生態写真が載ってるんですが。どこなんだろう。だんだん長靴に浸水してきて諦めました。夜は車中泊のつもりだったけど心身共に疲れたのでビジホでお布団課金。

翌日は打って変わって素晴らしい天気。期待が高まります。朝6時くらいからヌバタマハナ飛ぶらしいので、そのくらいから待機。
そのうち虫屋さん一名登場。関東の方で、ここは何度かいらしてるとのことで、色々と伺いました。
小一時間ほど適当に探索し、その方ヌバタマハナ1ゲット。自分はヤシャブシを掬って、、、

ベニハンノキカミキリ

赤化個体変異、いわゆるベニハンノキですが、さらに前胸が白くなっています。いろいろバリエーションがあって面白そう。しかし例年であればハンノキは佃煮にするほど取れるらしいですが、これのみ。

午前いっぱい吹き上がってくる虫を掬いましたが、コメツキばかり。そういえば他のの虫屋さん全く来ない。やはり最近はダメなのか。噴火の影響?うーむ、なんともしょっぱい初挑戦となりました。
実はもう一箇所行きたい場所があり、ムナコブは割といろんな場所で取れるからヌバタマ撮れたら即転戦する作戦でした。どうもどっちも見込みないので11時には見切りをつけて移動開始。一路宮崎を目指します。
一度ソボコブの夜回りに行ったことのある場所ですが、オヒョウなど生えており昼に掬ってみたいと思ってた場所。しかも上の方では極レアのシナカミキリ九州亜種が狙えるとのこと。
昼過ぎには山麓に到着。帰りの飛行機があるのでダッシュで山に登ります。多分コースタイムの半分くらいで登りました。道中、タンナサワフタキの立ち枯れが多く、後でヘリグロホソハナ九州亜種を撮影するために場所を記録。ヘリウスハナも見た気がするけど急いでるのでパス。

ここはピドニアも結構いいのがいるんで、随時花を掬います。なにかの花から、真っ黒いカミキリが。なんだろ、シナノクロフ系?時間ないから後で見よう、と先をいそぎます。
シナノキがあると教えてもらったエリアに到着。何本かあるのを見て回ります。これまでの経験で、開けた空間に突き出した枝にサペルは来やすい気がするのでそういう枝で葉に筋状の穴を探していると、それらしき跡を発見。入念に掬います。網を見ると、やたら太いカミキリのシルエット。「うーん、サペルじゃねぇな。なんだろ。」と覗いて見ると、、、

シナカミキリ九州亜種☆

うわーーー。きたーーー!本州産よりがっしりしてて赤みがあるということですが、もともと太いシナのメスでさらにがっしりしてたようです。
九州はシナノキがあまりないので、分布が孤立して特化したんでしょうね。九州亜種はいろいろ赤くなる傾向があるようです。
元記載も、ここから遠くない山で最初は材採で多数とれて、でもそれだと野外成虫と色が違う可能性があるので高桑さんがなんとか野外で一匹採集して記載に至ったようです。

シナノキ

取れたシナノキ。よく見ると上のほうが折れて枯れてます。発生木ですね。
しかし、シナカミキリはフラッシュで赤みが増してしまうという問題に気がつきました。上の写真は多少補正してます。山梨とかではあまり気にならなかったけど、ここのは辛子明太子みたいな色になってしまう。WEB上にある写真の一部もそうですが、実際はそんなに真っ赤ではないです。
フラッシュ撮影後の色調補正と、自然光での撮影をしてみました。お腹のモフモフがいいですね。あとはエリトラの角張ったところと質感。焼き菓子のようです。

ナナカマド

下山途中で、なぜか一株だけナナカマドが咲いていました。掬うと、、

イヨヒメハナカミキリ九州亜種☆

ここはヨコモンがいないので、イヨ九州亜種かカグヤか、ということになります。前胸の頂部がどう撮影しても尾根になってないのでイヨと判断。


トサヒメハナカミキリ

のどの部分が黄色です。


イシヅチヒメハナカミキリ九州亜種☆

あとは登りで掬った黒いカミキリ。自宅へ帰って撮影してみたら、、
なんとー。これはよい。場合によってはヒミコと紛らわしい個体もいますが、まあメスならお尻が尖ってるので同定は簡単。
ここまで黒いとまあ間違えようがないですね。というか、四国で見つけた原名亜種も真っ黒だったので、黒化個体しかまだ見たことないです。

ヘリグロホソハナカミキリ九州亜種☆

登りで目をつけていたタンナ立ち枯れ。表富士では夕方にヘリグロホソハナ運動会だったので見に行くと、、、
まーさーに運動会。本州産に比べるとかなり赤いですね。


これであらかた目標達成。あとコジマベニスジとか掬えれば完璧だったんですが、帰りの道中でまだ狙うものがあるので余裕を見て出発します。
空港近くまでもどって来て桑畑を再訪。道にある桑の大木を掬うと、、、

ムネホシシロカミキリ★

やったー、満願成就ですわ。三匹ほど見つけました。正面から見るとドクロみたいで若干恐い。
オシロよりは繊細な感じですね。近くで畑をしておられたおばちゃんに桑の木について聞いたら、昔からあるので残しているとのこと。よかった。


総括

阿蘇はダメでしたが、その他もろもろ、充実した遠征でした。