0-02-01から1ヶ月間の記事一覧

「回転物理学」虎の巻

本作の舞台は、我々の宇宙とは時空の性質が少しだけ違う宇宙です。「少しだけ」というのは数式の上での話で、その物理的帰結は非常にドラスティックな違いとなって現れます。我々の宇宙では、時空間にいる人が時間と空間を少しだけ移動した場合に、主観的な…

登場人物 12章以降(山岸真氏作成)

〈孤絶〉の乗員 ヤルダ……主人公。〈孤絶〉では評議官(リーダー)となる。航法士や教師も務める フリド……前出のエウセビオの助手。〈孤絶〉では副リーダー、航法士 ファティマ……知的好奇心旺盛な薬草園配属の少女 ニノ……農民出身の男 バビラ……航法士 デルフ…

登場人物 11章まで(山岸真氏作成)

ヤルダ……主人公。長じて光学物理学者となる ヤルダの一族(農民)など ヴィト……ヤルダの父 ダリオ……ヤルダの祖父 ジュースト……ヤルダのおじ ルシア、ルシオ……ヤルダの姉、兄(生まれたのはヤルダと同時。このふたりもヤルダを姉と呼ぶ) オーレリア、オーレ…

星の見えかた

5章で書かれている通り、作中の宇宙では「光は単なる光」で一種類しかありません。 我々の宇宙では波長や周波数がいろいろあって、しかし速度は一定、そしてドップラー効果によって赤方とか青方偏移して若干色が変わります。 一方で作中の宇宙では光は一種…

巻末参考文献ほか

「万物の理論は究極のアンサンブル理論に過ぎないのか?」http://arxiv.org/abs/gr-qc/9704009 ざっと冒頭を読むと、「すべての数学的に可能な宇宙は物理的にも存在していると考えられる。なぜなら十分に複雑な数学構造はその内部に意識を持った存在を内包す…

19章

こちらの世界でも、原子核の回りを回る電子がなぜ電磁波を出してエネルギーを失って原子核へ落ちていかないのか、ということが謎でしたが、とある理論が生まれて解決しました。第二巻の物理テーマはこの理論がメインとなります。 E = -m c^2 この式を見たら…

15章

傘の話 ここは、正直きついですね。今まで空間1次元+時間1次元の平面図で話をしていたけど、宇宙船の進行方向に対して前とか横とか議論するには空間の次元をもうひとつ増やさないといけない。 ほんもんの三次元+1次元は絵にかけないので、空間を二次元…

13章

実際どのような分子とか結晶ができるのか、コンピュータで計算してみれば面白いけど難しいです。ポテンシャルに谷がたくさんあるので。 粒子間に働く力は距離の二乗に反比例しますが、ある粒子から距離Rだけ離れた位置にある粒子の数は距離の二乗に比例しま…

9章

作中で述べられる温度の定義はこっちの宇宙の物理学(統計力学)でも同じです。通常は「体積」の対数をとったものをエントロピーと定義し、それをエネルギーで微分したものが1/温度と定義します。 log(V(E))' = V'(E)/V(E)。 AからBへエネルギーを移したとき、…

8章

予測の問題 波に関しては作中で解決していますが、過去に戻れる場合にはいろいろ本質的にやっかいな問題が出てきます。 ビリヤードのシミュレーションをするとします。玉の動きを時間とともに計算していきます。動きが激しいと、どこかで玉が過去に向かって…

7章

ズーグマ大学付属中学 入試問題 宇宙空間で左の図のように一直線に並んだ点1〜5から、同時に赤、青、紫の光が世界に向かって飛んでくるとします。 それぞれの点は右の図のように夜空で一直線に並んだ方向に見えます。 点2、点4から世界までの距離は点3まで…

6章

一次の変化率= 一階微分 二次の変化率= 二階微分 のことです。 sin(ax)'=a cos(ax) sin(ax)''= a cos(ax)'= -a^2 sin(ax) exp(ax)' = a exp(ax) exp(ax)'' = a^2 exp(ax) 時空の図 「横軸に年度」「縦軸に売上げ推移」のように現実世界では時間が右向きの…

5章

星の尾の長さ=赤と紫の部分の視差角度=星の動いた距離÷星までの距離 星の動いた距離=赤と紫の光が届く時間の差*星の速度=(星までの距離÷赤と紫の光の速度の差)*星の速度 したがって尾の長さ= (星までの距離÷赤と紫の光の速度の差)*星の速度÷星までの距…

3章

「運動量」ってなんっだっけ ざっくり「勢い」みたいなもんです。英語で "momentum"。以下の場合で、ふっとばされる度合が強い順に並べなさい 小学生に秒速1mでぶつかられる 小学生に秒速2mでぶつかられる マツコ・デラックスに秒速1mでぶつかられる マツコ…

クロックワーク・ロケット メモ

クロックワーク・ロケット (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者: グレッグイーガン,山岸真,中村融出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/12/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見るグレッグ・イーガン『クロックワーク・ロケット』の図やリンク…