The Clockwork Rocket (Orthogonal)
- 作者: Greg Egan
- 出版社/メーカー: Nightshade Book
- 発売日: 2011/07/19
- メディア: ハードカバー
- クリック: 12回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
作中で自由粒子の相対論的速度領域での統計力学が議論されてて、これがエキセントリックだったので自分で計算して検証しました。以下自分でやりたい人やネタバレ嫌な人はスキップ
運動量
R^4中の世界線の向きをどう表現するか。線に沿って動いていると常に線の長さに比例した主観時間が経過するので、単位時間に動く長さのベクトルにするのが自然。これに静止質量をかければ運動量になりそう。静止質量が座標系によらなければこれは単純に幾何学的定義なので座標系によらないベクトルとなる。速度Vで動く物体は単位時間に空間をV移動し、時間方向に定数C動くとすると接線ベクトルは
主観時間で測って単位時間にC動くんでこれにCかけると
となる。これに静止質量をかけたものを運動量にしてみる。複数の粒子の運動量の合計が、ある座標系で見て、ある物理過程の前と後で同じだとする。ある2つのベクトルが等しい、というのは座標系によらない話なのでこの運動量を使えば保存則は座標に依存しない。てことでこれが正解っぽい。
ところでこのベクトルの時間成分に-CをかけたものはVが小さいとき
となり運動エネルギー+定数になる。これをエネルギーにすれば、あら便利、エネルギー保存も自明に。というわけで
ちなみにうちらの世界では
熱力学
エネルギーE〜E+dEの範囲にある、速度の位相空間の体積を求める。接線ベクトルは四次元空間の単位球の表面にあるので、E~E+dEの範囲にある球面の面積が位相空間の体積だとするのが自然。面倒なんでm_0=C=1にして計算するとその面積は
この対数を取ってEで微分したものの逆数が温度。
普通に単調な関数です。グラフはこちら
しかしイーガンの計算ではこれが途中で無限に飛んでから符号が変わるとなっていて、それが世界設定にも深くかかわっている。
http://gregegan.customer.netspace.net.au/ORTHOGONAL/05/Thermodynamics.html
どうなんだろう。位相空間の体積の定義で自分の計算と違ってきている。識者の意見を待ちます。