The の効用

日本人には分かりにくい "a" と "the" の区別。自分も論文を英語で書くと赤ペンだらけで返ってくるけど、大部分がこの間違い。でも小説では効果的に使われる例がよくある。the がつくと「いちいち説明しなくても分かるもの」「世界に一つしかないもの」という意味になるので、それを強調するとき効果的。たとえば:

  • "The Enemy":指輪物語でのサウロンのこと。この時代に敵といえばすなわちサウロンなのでこうなる。瀬田訳では「かの敵」

  • "the usual":前述の「ユニコーンバリエーション」に出るセリフ。バーのカウンターでこう言えば「いつものやつ」ということになる。

  • "a sun"アンバーシリーズで出てきた表現。sun や moon には the を付ける、って中学校で習ったぞ!という人、正しいです。それは普通 sun や moon は世界に一つしかないから、「どの太陽」とかは言わなくていいので the になります。しかし!アンバーの世界は多元並行宇宙。シャドウシフトで他の世界にいくと紫や青の太陽があったりするので、そういう太陽を指すときは "a sun" となるのです。