岩波少年文庫ホビットの冒険』上下 ISBN:4001140586
購入。以前読もうと思ったときは確か文庫がまだなくて、小さ目の原書ペーパーバックを電車で読んでた。いやー瀬田さんの訳はいいですね。
ゴクリ登場シーン
「しゃー!してきだこと!いとしいしとよ。」
このインパクトはどうよ、て感じ。これに寺島さんの山椒魚のような挿絵が加わって、もう最強。原文は "Bless us and splash us, my preciousss."インパクトは瀬田訳の方が上っぽい。"bless me" で驚きの表現。それが "us" になってるのがゴクリ語。"splash us"はよく分からない。
山椒魚、、、山椒魚、、、あ!そういう小説あったような。書店で確認。井伏鱒二山椒魚』を立ち読み。暗い岩屋に閉じ込められた山椒魚が、迷い込んだ蛙を閉じ込めて会話する。これだ!寺島さんの絵はそういうことだったのか!
後の解説に「『指輪物語』をお訳しになっていた長野の山小屋」という文があってなるほどと思った。指輪で夜のシーンはほとんど必ず月の満ち欠けや高さについての描写がある。町で暮らしてるとあまり気にならないけど、夜に真っ暗になる場所だと多分かなり明るさが違う気がする。あとは地形や植生に関する緻密な描写も街中ではイメージしにくいけど長野の山の中だと実感が湧きそう。



☆気がついたこと@裂け谷近辺
heath/heather
ヒースと訳してある植物。情景描写にやたら出てくる。日本にはあまり生えてないらしい。hearth(暖炉)とまぎらわしい。

Yes, they are all safe and sound/さよう、全員つつがなし
no small feat/なまなかな手柄ではない
War is preparing!/戦さは必定じゃ!
fortune or fate have helped you/幸運か宿運かに助けられたのじゃ
cavernous streets/通りが四通八達しております
勉強になります。

Gloin at your service.
グローインです。どうぞご別懇に。
Frodo Baggins at yours and your families.
フロド・バギンズです。あなたさまにもご一家のみなさんにもどうぞご別懇に。
ふーむ、ホビットではどう訳してあったっけな、と思って読んでみる。なんと!全員違う訳になってる!

ドワーリン:どうぞよろしく
バーリン:ごひいきに
キーリ:お見知りおきを
ドーリ、ノーリ、オーリ、オイン、グローイン:今後もあいかわりませず
ビフール、ボフール、ボンブール:ごべっこんに
ビヨルンの家で:
トーリン:お見知りおきくだされい
ドーリ:お役に立てばさいわいでございます
ビヨルン:いや、けっこう。役に立ってもらうときは、こちらから頼む。
(I don't need your service, thank you.)
"名前 at your service."だと「どうぞよろしく」程度の意味。だけど"I am at your service." だと「なんなりとお申しつけ下さい」という感じのニュアンス。ビヨルンは言葉尻をつかまえて突っ込んでいるので訳を変えるしかない。山本訳では「あなたのしもべです。」という訳で全部統一してしまった。瀬田訳では、統一すると不自然になるから、エイヤッと全部変えてしまったんだろうな。

Time doesn't seem to pass here: it just is.
ここじゃ時間はただ存在するだけで、過ぎ去ることがないみたいだ。
Be 動詞はいろいろ深い使い方ができますね。他にはこんなのも。

「トムボンバディルというのはどなたですか。」
「あの方です。(中略)あの方です。あなたがごらんになったとおりです。」
who is Tom Bombadil?
He is,(中略)He is, as you have seen him.

clippety-clippety-clip/カッカッカッ
グロールフィンデルの馬の蹄の音。辞書には載ってなかった。この人の台詞は英語が微妙に難しい。瀬田訳でも一部文語っぽくなってた。
パロディの"Bored of the Rings"ではグロールフィンデルと馳男の挨拶はこんな感じ:

Garfinkel: A syanon esso decca hi hawaya.
Stomper: O movado silvathin nytol niceta-seeya
esso decca ってのはガソリンの商品名かなぁ。hi hawaya と niceta-seeyaは笑える。

トロルの歌:
For meat was hard to come by.
Done by! Gum by!
肉はなかなか手に入らんと、ばい。
だめだとばい!しゃくだとばい!
九州弁っぽいのがトロルに合ってるなあ、と思ってたらそうじゃなくて by をそのまま訳してあるんですね。うひゃー。こういうのは普通の人にはできない芸当かも。
英語の方は節を考えながら読む。歌うのはサムだから単純な節のはず。「まつぼっくりがあったとさ」の節が結構はまった。「ばい」のとこだけはリズムよく三回叫ぶ。
その後で教授自身の朗読を聞いてみる。ふーむ、なるほど。そういう節なのか。でも原文で Tom と Tim が出て来るけど朗読はジョンとジムに聞こえる。
ラダガスト:"a land called Shire."
ガンダルフ:"The Shire," I said
ほかにも庄の地名は "The Hill" とか "The Water" とか。狭いコミュニティだから「(あの)お山」や「(あの)川」で話が通じる、って雰囲気ですね。

「ムービースター」という日本の映画雑誌に記事発見。指輪を「ドーム山」に捨てる、だって。あはは。これ訳した人、ドームの割れ目に身を投げてください。

そういえばバクシ版のDVDを発売日に購入。でもプレイヤーはまだ買ってない(汗)。