遺伝的多様性の数理

血液型の割合というのは世代とともに変動するのでしょうか、あるいは一定の値に収束するものでしょうか。
例えば遺伝子AAの人が生まれるのは、両親ともAAなら100%、AAとOAなら50%、ABとOAなら25%、などとなり、それぞれの割合をP_AAなどとおくと、子供の世代のAAの割合は以下のようになります。(世代を飛び越すような交配はないと仮定します)

P_AA(next)= P_AA*P_AA + P_AA*P_OA*0.5 + P_OA*PAA*0.5 + P_OA*P_OA*0.25 + P_AA*P_AB*0.5+P_AB*P_AA*0.5 + P_AB*P_AB*0.25
ここでOAとAOは区別できないとして、まとめてP_OAとします。交配に関しては、AAとOAの交配の場合はどっちが父親でどっちが母親かの2通りがあるので二回でてきています。

次世代の割合は、今の世代の割合の二次式で表されます。次世代でも割合が変わらないような解はどのくらいあるのでしょうか。変数はAA,BB,OO,AB,OA,OBの6つ、ただし合計で1という条件があるので実際は5つ。全部が変わらないという条件も6つだけど5つが変わらなければ残りも変わらないので、こちらも条件は5つ。
変数と条件の数が同じなので、全て満足する解は普通に考えると有限個になりそうです。ということは、たとえば血液型の割合は数種類の分布のどれかになるということでしょうか。実際に見ていきます。

たとえば次世代がABになる確率をよく考えると、一方の親からA遺伝子をもらう確率PAと、別の親からB遺伝子をもらう確率PBの積でいい、ということが分かります。どっちから何をもらうか、というのは独立な事象だからです。ただし、AAの場合はPA*PAですが、ABの場合はどっちの親からどっちをもらうか、2つの場合があるので2PA*PBとなります。まとめると、
Paa(next) = Pa*Pa
Pab(next) = 2Pa*Pb (a≠bの場合)
親から遺伝子aをもらう確率Paは具体的に書くとこうなります
Pa= Paa + Σ{b≠a} Pab/2

例えば血液型ABOの場合、
PA= PAA + PAB/2 + POA/2
実際、PA*PAを計算すると、上で計算したP_AA(next)に等しくなります。

ここで、添字が1つのほうの確率PAなどが次世代でどうなるか見ます。
Pa(next)= Paa(next) + Σ{b≠a} Pab(next)/2
= Pa*Pa + Σ{b≠a} 2Pa*Pb/2
= Pa *(Pa+Σ{b≠a}Pb)
= Pa *(Σb Pb)

ここで
Σb Pb = Σb Pbb+Σ{c≠b} Pbc/2
c≠bPbcとPcbが重複して出て来るのでPbcの1/2係数は消えて、
Σ{c,b} Pbcとなり、これは全部の割合の和なので1。つまり
Pa(next)= Pa
となり次世代で変化しません。Paはa遺伝子の数と考えられるので(AAの場合は二倍にカウント)まあこれが変化しないのは当然なのかもしれません。
ということで例えば血液型の場合に不変となる量はPA,PB,POの3つ。これらは合計が1になるので、実際には2つの不変量があって、これらは互いに交配しない集団があった場合、それぞれ別の値をとることになります。つまり定常状態は有限個でなく、2つのパラメータで表される二次元空間にある、というのが結論です。また定常状態には一世代で収束し、ゆっくり漸近するわけではないというのも面白いです。
一般的に遺伝子がN種類ある場合はN-1次元の不変空間があることになります。

血液検査で判明するのは遺伝形でなくA型,B型などの形質になります。これらの割合をQ(A)などとおくと、
Q(A)=PAA+POA = PA*(PA+2PO)
Q(B)=PBB+POB = PB*(PB+2PO)
Q(O)=POO = PO*PO
Q(AB)=PAB =2*PA*PB

PA=s, PB=t, PO=1-t-s とパラメトライズすると、A,B,Oの割合を三次元でプロットした場合
Q(A)= s*(s+2(1-t-s))
Q(B)= t*(t+2(1-t-s))
Q(O)=(1-t-s)(1-t-s)
という曲面上にデータがのるはずです。
このページにある世界各国のデータをプロットすると
https://en.wikipedia.org/wiki/Blood_type_distribution_by_country

実際にこの曲面に乗っていることが分かります。1つだけ外れてるデータがありますが。

追記:この平衡状態は Hardy-Weinberg equilibrium と呼ばれるそうです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87

マヤサンコブヤハズカミキリ基亜種@岐阜

マヤサンといえば某池周辺が有名で、他の種類のコブ含めてもあれだけポロポロ落ちる場所はないわけですが、あそこで落ちるのはチュウブマヤサン、マヤサンコブヤハズの中部地方亜種です。基亜種との違いは明確に線引きできるものでもないらしいですけど、まあそっちも見てみたいわけですね。タイプ山地である兵庫の摩耶山ではもう絶望的らしいですが、他にもいろいろ産地はあるようです。
今回はコブ図鑑で「少なくない」と書かれていた岐阜のとある山へ行ってみました。居酒屋みたいな名前の山といえばまあどこか分かるでしょうか。

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比較用:チュウブマヤサン採集記 https://ita.hatenadiary.jp/entry/20141004/p1

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山梨のオオトラ

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2022はお盆以降もタマムシなど狙いはあったんだけど、ちょうどお盆にコロナになってしまい中止。幸いお盆休みに重なり仕事には影響なく、症状もワクチンのおかげか、解熱剤と咳止めで抑えて楽でした。
8月はこんな感じ:

  • 8/20 富士周辺で赤松枯れ枝(ヒメシラオビ)とネズ枯れ枝(アテミア)を採集。どれも外れ。夜の作戦は雨で中止。
  • 8/23 富士付近のモミ林で去年みつけたモミ倒木を夜に見回り。シナノサビが来ないかとの妄想によるもの。伐採1年ほどかな。来なかった。カマドウマばかり。朝に帰宅して風呂入って出勤。

というわけで季節は変わり9月に。
山梨のオオトラ有名産地へ今年も出撃。二年前は生態写真撮影してたら接写する前に逃げられたので、今回は躊躇なく確保することにします。
この前の週は富士周辺でまめわらびーさんに案内して頂き、以前確保されたヤマブドウでブドウトラ捜しするもヌル。また新鮮な赤松伐採材でヒメシラオビ成虫や材を探すも、こちらも外れ。
9月も第二週に入り山梨のオオトラが多く記録されている時期。この日の前日は高尾山で探すも曇りで日当たりなく、オオトラも虫屋も全く見なかったです。気を取り直してこの日はSさんと出撃。予報によると最高気温は29度。期待できます。
現地につくとベテランさんから若手まで大賑わいになってました。
9時くらいから開始。しかしさすがにまだ出ないだろうから、しばらくブラブラして集中力を温存。メディオがいそうなモミ材など探して時間を過ごします。

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真っ暗な道の真ん中で体育座り@大隅半島

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屋久島のカミキリが何故か棲息している魔境大隅。名物のあれこれは7末から8上まで狙えるのでシーズン最終盤に狙うのに最適です。二年前オオスミヒゲナガは見つけられたので(https://ita.hatenadiary.jp/entry/2020/07/31/000000)、残りの名物を狙いにH岳へ行きました。
名物:まず大隅にしかいないのがヨコヤマヒゲナガの親戚オオスミヒゲナガ(亜種に変更されそう?)、ヤクシマミドリの大隅亜種、およびノルティアことサツマムネスジウスバ。屋久島と共通なのがズーデスことクロモンキイロイエ、ルフェことムモンチャイロホソバネ、スピニことトゲウスバなどです。
昼間は暑くて厳しいので現地昼着くらいで、ゆっくり物件の下見したりして本番は夜です。
ノルティアもルフェも、2年前にオオスミヒゲナガのエリアで出会った知人はライトを設営してから酒盛りしてて確保してました。自分も今年は今峰のライトを買おうかとも思ってたけど機を逸してしまいました。となれば夜回りです。

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