http://www.keepingthedoor.com/2009/10/30/greg-egan-the-big-interview/
Orthogonal is a novel I’m working on right now; it’s set in a universe with laws of physics that are different from our own. One small change in a fundamental equation just turning a minus sign into a plus sign leads to some incredibly rich variations in everything from the way biology works to the relativistic effects of space travel.
現在執筆中の長編"Orthogonal"は、物理の基礎方程式の符号を一個だけマイナスからプラスに変えただけでこの世界と全く異なる法則になる世界を描くそうで。基礎方程式というと、ニュートン、マクスウェル、シュレディンガーなどがあるけど、これらの符号を変えても時間や電荷を反転させれば元にもどって物理法則が変わらない。
一方、時空の性質を表す計量はかなり違ってくる。我々の世界では、時間tと距離x離れた2つの事象について、相対論によればx^2-c^2 t^2 という量は誰が見ても変化しない。ちょうど x^2+y^2という量が座標を回転しても変化しないように。ただし時空の場合は一方がマイナス符号なので回転とは微妙に違う*1。一時間後に1km離れた場所でなにか起こる場合、x=1km, t=一時間だけど、時速1kmで歩いてその場所まで行く人の座標系だとx=0で、時間が若干ゆっくりになってtが1時間より短くなる。xもtも減って結局x^2-c^2 t^2 は変化無し。相対論では時間を一種の空間軸として計算するけど、それでも特別扱いされていて、それが符号に現れている。四次元空間で時間が進む方向は多少傾けるけど真横とか後ろにはならない。
ここで符号を変えて、x^2+c^2 t^2が変化しない、という世界にしてみる。これだと時間も空間も完全に同等な4次元のユークリッド空間の世界になる。物理法則はあらゆる4次元空間の回転に対して不変となる。数学的に言うとSO(4)対称。これは special orthogonal と呼ばれる行列の群で、タイトルはおそらくこれが由来。
とはいえ、物理が対称でも現象もそうなるとは限らない。相対論だとどんな速度で動く座標系も対等だけど、地球上では重力や空気抵抗のために地球に固定した座標系が特別な意味を持つ。いわば局所的に自発的対称性の破れがおきている。その座標系で静止してる物質が多いからたまたま特別になってる。この宇宙に反物質より物質が多いのも同じような話。同様に、時間と空間を自由に回転できる宇宙では時間が逆行したりもできるけど、ある星とかに限れば局所的に時間の方向はほぼ一定となる。しかし宇宙のどこかには時間が逆行したり横向いたりしてる星もありうる。こいつらが出会うとどうなるか。全く想像できない。ルミナス+時間衝突みたいな。
ほんとかよwww
- 作者: バリントン・J・ベイリー,大森望
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