●グレッグ・イーガン『Schild's Ladder』 ISBN:0575073918 【アマゾン】 |
(作者のサイト)SO(4)関連、先日の部分に追記。
現在 130ページ。いままではあらすじ紹介とかに書いてあることしか書いてないけど、そろそろネタバレで書けなくなってきた。ものすごく読むの遅いけど、そうしないと理解が追い付かない。新しい真空をどうすべきかで二つの派閥が出来て常に論争してるし、それに真空の性質に関する物理的な議論も加わるので大変。だいたい何万年も未来の話で肉体とか精神に関するパラダイムが激しく変わっていて、それをベースに議論してるから良く考えないといけない。
人間は "Qusp" というプロセッサを頭に入れてて、思考する間は一瞬外部との相互作用を断って純粋量子状態になり多世界への分岐を防ぐことで自由意志を実現してる、という設定だけど、これは納得いかないな。永遠に外界と断絶してるなら分かるけど、たとえばシュレ猫を目で見て考えたりしたらそれでアウトじゃん。それに多世界へ分岐しても各意識は自由意志で動いてんだからいいのでは。
あとは物理屋がにやりとする話が散りばめてあったり。「調和ポテンシャル中でガウス型波束が形を保つのを考えてみれば、」とか、宇宙をソフトウェアとして説明する理論に対して「量子コンピュータはあらゆる量子現象をシミュレートできるけど、だからといってあらゆる現象の背後に量子コンピュータがあることにはならないでしょ。」「でも、アルゴリズム理論のいろいろな証明は仮想的なチューリングマシンを想定してるけど、誰も宇宙に紙テープが無いからといって文句を言ったりはしないだろ」とかいう会話とか。
告白しますと、修士の面接試験で「何を研究したいですか」と聞かれて、「観測問題とかやりたいです」とか言ってました。ははは。他に面白い問題を知らなかっただけなんですけど。観測問題じゃメシ(論文)のタネにならんわ。最近じゃ量子コンピュータ絡みで観測問題とまでいかなくてもベルの不等式とか「ボブとアリス」の出て来る論文いっぱいありますけど、どうなんですかね。本業としてやるのは大変じゃないかな。コーヒーブレークに考える問題としては最適だと思うし、それで万一論文ネタ見つかったらそんときゃ書けばいいけど。日本でやってる人とか、初期のころはそういうスタンスの人が多かったんでは。
逆ソーカル事件。騒ぎが大きくなったのは、どうもイーガンと共著論文もあるBaez 氏の告発が大きいらしい。どちらにせよイーガンの最近の作品とこの人のネット上での活動で量子重力理論に興味を持つ人は増えてる気がする。自分もその一人。