ボンバディルの歌、


Hey dol! merry dol! ring a dong dillo!
Ring a dong! hop along! fal lal the willow!
Tom Bom, jolly Tom, Tom Bombadillo!
パロディの "Bored of the Rings" では陽気な "Tim Benzedrine" が歌う:

Toke-a-lid! Smoke-a-lid! Pop the mescalino!
Stash the hash! Gonna crash! Make mine methedrino!
Hop a hill! Pop a pill! For Old Tim Benzedrino!
toke=(マリファナを)吹かす,smoke=(マリファナを)吸う,lid=マリファナの小さな包み,pop=麻薬を飲む/打つ,pill=薬,mescaline/methedrine/Benzedrine=全て幻覚剤,Stash=隠す,hash=麻薬の一種,crash=警察が踏み込む/麻薬が切れる,Tim=LSDのグールーの名前。
彼は陽気に歌って踊っているけど、突然もがきだして来る来る来る来る奴らが来る!来るな来るな来るな!ウアアア!とか言い始める。大笑い。リーダース辞書の普段は全然使わない≪俗≫という項目が大活躍。

●面白い表現 in ブリー村

but they were more friendly and familiar with Hobbits, (中略) than was (or is) usual with Big People.
そして、大きい人たち一般にくらべると、ホビットとか、(中略)とずっと親しくまじわっていました。
(or is) ってのは、「当時は(今でも)おおきい人たちは他の種族とあまり親しくなかったけど、ブリーの人達はもっと親密だった」という感じ。訳では割愛されている。ここで「今」ってのがいつなのか問題になる。フロドがこの本を書いた時期だと当時に近すぎる。我々のいる現在、という意味かなぁ。翻訳者兼編集者のトールキンによる註、って感じで。
英語の小説では特別な場合を除いて現在形が使われることはない。だからあえて使う場合は効果的になる。今まで読んだ本では、ゼラズニイの「アンバー」シリーズで平行世界の間を移動する「シャドウシフト」のシーンで使われてて息詰まるような緊張感があったのとか、エリスンの"Prince Myshkin, and hold the relish"で、ちょっとイカレた男が自分の不幸な人生をひたすら現在形でまくしたてて異様な迫力があったのとかが印象に残る。

「薄い空気になった(vanishing into thin air)。それとも濃い空気になった(or into thick air)。」
"thin air" は「何もない空中」という慣用句。でも部屋がパイプの煙でモクモクだったのでバタバーは"or into thick air" の方がふさわしいかな、と洒落を言う。

Mr. Strider/馳男の旦那
あだ名にMr.を付けるサムが笑える。

Barliman Butterbur at your service!
バーリマン・バタバーになんなりとご用命くださいまし!
"at your service" といえばホビットに出て来たドワーフ達の挨拶が印象的。

Double sharp!
大急ぎ!
へー。知らなかった。

Mind your Ps & Qs
みんないうことなすこと気をつけてくれたまえ
これも辞書に乗ってる表現だけど知らなかった。

Outsider/よそ者
ホビット庄の人間はブリーの人間をよそ者と呼んでたけど、そのよそ者のバーリマンに自分達が「よそ者」と呼ばれる。原書では大文字になってて印象が強い。

these black men,(略) they're lookingfor Baggins, and if they mean well, then I'm a hobbit.'
「黒いやつらのことでごぜえますよ。(略)やつらはバギンズを探しておりますぞ。いいことで探してるんでしたら、わしがホビットになりかわっておみせしますよ。
これを読んだ時は訳が手元になかったんで30分くらい解釈に悩んだ。その結果、「あの黒い連中が何か良い理由でバギンズ氏を探してるなどというのは、自分(バタバー)がホビットだと言うのと同じくらい明らかに違うと分かる」という意味に解釈したけど。本当のところはどうなんだろう。

I am Aragorn son of Arathorn; and if bylife or death I can save you, I will.
わたしはアラソルンの子、アラゴルンだ。そしてわたしは、命にかけてあなた方を助けることができる。助けて差し上げよう。

これはTVCMによれば映画でも喋るセリフだから要チェック!かっこいい!


You might have done in the real Strider and took his clothes.
ほんとの馳男をばらしちまって、着てた物を取っちまったかもしれねえ。
"do in" =バラす。瀬田さんにしては恐い訳。でも基本的な動詞の熟語を多用するサムらしい台詞。

'there is one crumb of comfort, (中略) and more than a crumb, I hope'
少しは慰めになることが一つある(中略)少しどころじゃないかもしれないよ」
"a crumb of comfort" で僅かな慰め。crumb はパンの一かけらという意味なので、朝食がそれ以上ならいいなあ、という洒落。

However, in the meanwhile for all Mr. Butterbur knew his money was gone forgood, or for bad.
しかし、その当座は、バタバー氏としては自分のお金はおそらく永久に失われてしまっただろうと思うほかはありませんでした。
"for good" は永久に、の意味。でもビルに払ったから"for bad" かも、という洒落。
あとは、「指を突っ込んだ、というべきか。」の部分とか、とても自然に訳してある。もしかしたら、多少苦しい言葉遊びの訳でも、他の部分が格調高いので、「そういう表現がきっとあるんだなー。」と納得してしまうのかもしれない。