9章

作中で述べられる温度の定義はこっちの宇宙の物理学(統計力学)でも同じです。通常は「体積」の対数をとったものをエントロピーと定義し、それをエネルギーで微分したものが1/温度と定義します。 log(V(E))' = V'(E)/V(E)。
AからBへエネルギーを移したとき、体積A×体積Bが増えるか減るか。log(体積A×体積B)が増えるか減るかを調べても同じです。
log(体積A×体積B)= log(体積A) + log(体積B)なので、log(体積)がエネルギーが増えたときどのくらい変わるかをAとBで比較すればOK。

素朴にやると、BからAにエネルギーが移って体積A×体積Bが(体積A + Aの増分)× (体積B + Bの減少分)になった場合、その変化は(体積A + Aの増分)× (体積B + Bの減少分) - 体積A×体積B = 体積A × Bの減少分 + Aの増分 × 体積B + Aの増分 × Bの減少分。変化がすごく少ない場合は三番目の項は無視できて、体積A × Bの減少分 + Aの増分 × 体積B。これが増えたか減ったか調べればOK。プラスかマイナスか分かればいいので、これを体積A×体積Bで割ってプラスかマイナスか調べてもOK。そうすると (Bの減少分÷Bの体積) + (Aの増分 ÷ Aの体積)。

「可能性の数を数える」ときに使う「体積」を、相対論的な速度になった時にどのように定義するかは簡単な問題ではありません。「位相空間」とか「リュービユの定理」とかを相対論的に拡張する必要があります。そのへんの教科書に出てくるようなテーマではないです。
極端な場合、多くの粒子が全くバラバラな時間方向に進んでいる場合、そもそも統計力学の考え方が使えるのか、というあたりから考察する必要があるかもしれません。