γ線源が地中に浸透した場合/地面が凸凹な場合

田崎さんによる解説。空間線量がどの地面から来るかよくわかります。
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/docs/BqToSv.pdf

ではセシウムが地面に染み込んでいる場合はどうなるか。実験によると、雨などの影響で地中に沈下するペースは一年で1mmから2mm程度のようです。また土の温度が30度を越えると二倍程度の速さになるようです。
http://www.springerlink.com/content/m4523x72743651v1/
土として比重が2程度のものを考えると、だいたいオーダーとして土 x センチをγ線が通過すると exp(-0.2 x)程度減衰するようです。1mm程度だと無視できるけど、上の計算で分かるように地面からの寄与は斜めからが大きい。すると地中を通る距離が長くなって無視できなくなります。

空間線量の測定高さhへの依存性は空中の減衰率μを使って F(μh)となります。F()は積分で出てくる関数。計算をすっとばして結果だけ書くと、セシウムが地下d センチにある場合は上の土の減衰係数0.2を使って F(μh + 0.2 d)と、同じ関数で中身が少し違うものとなります。
hが100cmの場合μhは0.01程度。dが0.1cmの時0.2dは0.02。後者のほうが大きくなります。

ところで地面はある程度凸凹しているので、地下に染み込んでいなくても上の図のように凸凹の高さdの半分くらいの地下にセシウムが埋まっているのと同じような状況になります。
たとえば凸凹が1cm程度の場合、Fの中身への寄与は0.1程度となってμhよりオーダーが上となります。

以下の図は100cmで測定した時、たとえば半径32cmと1mの同心円で囲まれた地面からの寄与を積分した値を高さとして図示したもの(単位は任意)。dが1mm, 5mm でも数メートル距離からの寄与がかなり減ることが分かります。

地面の凸凹についてはこういう文脈でよく調べられてるようです http://www.palsar.ersdac.or.jp/data/kouhou/

地面高さの差の二乗平均が距離とともにどう変化するか、という量を variogramと呼ぶそうです。一般的な地面のデータではある距離までは距離の冪で上がって、それ以降はサチるようです。
しかしそういうことを詳細にモデル化するよりも、空間線量のvariogram を実測したほうが有益。たとえば10mとか1kmの範囲でホットスポットがある場合、それぞれ何倍程度まで高くなるかの見積りがあれば、安全評価に役立つ。