ガンマ線測定

ポイント:理想的な計算だと、放射性物質が高さによっていろいろ分布してても、水平方向は一様に分布してたら観測機の高さを変えても測定値が変化しないよ、あれ?というお話。

福島のメッシュ測定では各地点で地上1cmと1mでの測定が行われていて、だいたい1cmの線量は1mの1.3倍くらいのようです。
ガンマ線は空気中を1m飛んでも0.99倍程度にしか減衰しないので、だいたい100mくらいの範囲の影響をならしたものが測定されます。
ではこの1.3倍をどう説明する?

地面に一様な面密度で沈着した放射性元素からの寄与を計算すると、測定点が100mに比べて十分低ければ測定高度によらず一定、となります。
\int 2\pi R dR \frac{F(R/h)}{R^2+h^2} \exp(-\sqrt{R^2+h^2}/L_0)= \int 2\pi r dr \frac{F(r)}{1+r^2}\exp(-(h/L_0)\sqrt{1+r^2})
F()は測定感度の角度依存性。どんな関数でも結果はいっしょ。
高さzの空中に濃度ρ(z)で一様に浮遊している場合でも、z~z+dzの寄与を計算すると同じ計算で測定高度hに依存しません。ありゃ?

おそらく、1cm高度の測定のため測定器を地面に降ろす時に周囲の地面から沈着したRIが舞い上がってるんじゃないかと推測。あるいは測定者が障害物になっている効果か。
ちなみに質量数130程度の単原子気体がexp(-mgh/kB 300)で分布すると地上1000mくらいまで分布します。1000原子の粒子だと1m程度まで。それ以上重いと風で舞い上がってゆっくり落ちるだけ。大きさがマイクロm程度だと終端速度はほぼ0だそうで。

しかしこうなると、放射性元素半減期と別の半減期で線量が減衰してるのを地面への吸着だと今まで思ってたけど、計算の上では一気に全部地面に落ちても線量は変化しないはずなんで、うーんわからん、という話。

追記:上の議論はNaIシンチレーションでガンマ線を計ってる場合。GM管でベータ線を計ってる場合は話が別。ベータ線はもっと短距離で減衰するんで地面1cmの方がたぶん高くなる。ちなみに4/12の測定では海岸の壊れた橋の上での値もある。GoogleMaps見ると周囲は海。この地点では1cmも1mも値に差がない。

結局あれですよ。星の光は距離の逆二乗で弱くなるけど、距離Rにある星の数はRの二乗に比例するから、キャンセルして強さは一定。無限遠まで光を合わせれば地球は無限に明るくなるんじゃね?というパラドクスと同じで、ひろーくRIが分布してたら離れても弱くならないよ、という話。

追記

牧野さんの記事http://jun.artcompsci.org/journal/journal-2011-04.html#29
を読んで積分にはr無限の方が効いてくると気がついてアー!と再計算。
WolframAlphaさんに教えてもらって積分をさらに変形すると
\int  \frac{r dr}{1+r^2}\exp(-(h/L_0)\sqrt{1+r^2}) = \int_{-\infty}^{-h/L0} \frac{\exp(s)}{s}ds \equiv -{\rm Ei}(h/L0)
空気のL0の値、約200mを使い、h=1m とh=0.01mの値を比較すると約2倍になる。ガンマ線だけでもかなり高さ依存性が。
ちなみにEiはExponentilal Integral という関数でこんな形
http://www.wolframalpha.com/input/?i=Ei%28x%29
実際は距離による減衰のほかに、地面のデコボコで遮蔽される効果もある、というのをエイヤでいれてみる。完全に水平で0となるファクターとして、傾斜が1/1000あたりから落ち始めて0で0になるような\exp(-\sqrt{1+r^2}/1000)というのを入れてみる。すると比率はEi(0.01/200+1/1000)/Ei(1/200+1/1000)~1.38となって、いちおう実験と合わせられる。でもこの比は、1000を2000とか100とかにすると大きく変わる。