サーファー野郎の万物理論?

ハワイのサーファーが書いた超大統一理論の論文(プレプリント)が騒がれてるようです。
論文:http://arxiv.org/abs/0711.0770

むむ、なんかリー・スモーリンとか名のある人達がマジで受け止めてるぞ。もしかしちゃったりするのか!?

以下翻訳した記事:

物理学者にとっては聖杯とも言える宇宙の新しい理論を、貧乏なサーファーが考案し科学者たちの激しい精査に晒されている。
Garrett Lisi (39)は博士号を取ったが大学には残らず、ほとんどの時間をハワイでサーフィンして過ごしている。ここで彼はハイキングガイドや橋の建設作業員として暮らしてきた。
冬には彼はネヴァダのタホー湖近くの山でスノボをしている。「貧乏は最悪だ」と彼は言う。「来月に自分と彼女がどこで寝ればいいかも分からないのに、宇宙の謎を解くというのは難しい」
彼の変わった経歴にかかわらず、彼の提案には瞠目すべき点がある。素粒子物理の不可思議な基準に照らすと、彼の理論は高度に複雑な数学を必要としない。
さらに良いことに、彼の理論は時間一次元と空間三次元しか必要としない。対立候補の理論が10かそれ以上の空間次元やその他の奇抜な概念を必要とするのにだ。彼の理論を実験的に検証することも出来るかもしれない。理論は様々な新しい素粒子を予言していて、それらは来年ジュネーブで建設が開始される大型ハドロン衝突型加速器で生成されるかもしれない。
この39歳のGarrett Lisiの理論が認められるまでには長い道のりがあり、アインシュタインの業績に並ぶなどは夢のまた夢だが、二人には共通点がある。アインシュタインも科学の本流から外れた場所で特許職員として働きながら理論物理の偉大な業績を成し遂げたのだ。ただし全ての素粒子と宇宙の力を統一するという聖杯探求には失敗しているが。
今Lisiはネヴァダにいて、この聖杯探求の一つの道を見つけた。リー・スモーリンは彼の理論を「素晴らしい」と評している。「これは今まで長い長い間見た中でもっとも説得力のある理論だ。」と彼は言う。
「いくつかの素晴らしく美しい結果が彼の理論から出てくる」と David Ritz は言う。「これは偶然以上の何かのはずで、何か深遠なものを彼が掴んだのは確かだ」
今日の New Scientist で報じられた新しい理論は「例外的にシンプルな万物の理論」と題してオンラインにアップロードされた。彼は理論物理で1999年にUCSDで博士号を取っている。
彼はこの理論が30年前作られた『標準模型』の「根本的に新しい説明」だという希望を抱いている。標準模型は自然界の4つのうちの3つの力、すなわち電磁気、クオークを閉じ込める強い力、放射崩壊を司る弱い力、を一つに織り込む。
この騒ぎの理由は、Lisiのモデルが残りの重力も取り入れているからだ。これまで重力をうまく採り入れられた理論はライバルであり高度に洗練された超弦理論と呼ばれる理論だけで、その理論は素粒子が小さなひもで出来ていると考える。超弦理論は高度に複雑でエレガントだが、理論の実験的な実証はこれまでなかった。
しかし冷静な人もいる。Marcus du Sautoy は「これは大穴に見えるし埋めなくてはいけないギャップは多い」と言う。同僚の Eric Weinstein は「Lisiはとんでもない奴のようだ。会ってみたいよ。でも友人のリー・スモーリンはかなりの大穴に賭けてるね。」と付け足す。
LisiのアイディアはE8と呼ばれる数学で最もエレガントで複雑な形から来ている。それは複素8次元空間の248個の点からなる数学的パターンで1887年に発見されたが、完全に数学者に理解されたのは今年になってからであり、その構造を全部小さい字で印刷してもマンハッタン島くらいの面積になる(参考リンク)。 E8 は57次元空間の幾何学的物体の対称性を記述し、それ自身は248次元である。Lisi は「この宇宙もこんな美しい形をしていると思う」と言う。
E8 がそれほどまで面白い理由は、自然が物理の中心のあちこちにE8の構造を埋め込んでいるからた。我々が知っている素粒子の一覧がかくも奇妙なものであるのは、E8の奇妙な対称性の様々な面がその全ての理由なのだ(これ記事書いた人の独断ぽい)
Lisi が突破口を見出したのは E8 の構造を記述する方程式が彼の方程式と一致するのを発見した時だった。「その意味することと美しさで脳ミソが爆発したよ」と彼は New Scientist に語る。「こう思ったよ。『マジかよ、これだ!』」
Lisiが発見したのは様々な素粒子をE8の248個の点の上に配置する方法だ。20個の空席が残ったが、そこに彼はまだ概念だけの素粒子、たとえば物理学者が重力と関係付けている素粒子などを配置して埋めた。
物理学者は素粒子がいくつかのグループに分かれることに頭を悩ませてきたが、これはE8の幾何学から自然に導かれると彼は言う。これまで、E8内部の複雑な幾何学的関係から予測される相互作用は全て実在のものと一致している。「すごくクールだろ?」と彼は言う。
Lisiの理論を検証するには、何か実証可能な予測が必要だ。Lisiは今、20個の新しい素粒子が持つべき質量を計算していて、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)が稼働したらそれが発見されることを期待している。
「この理論はまだとても若く、まだ発展途中だ」と彼は言う。「いまのところ、この発見がなされる可能性は低い(けどほぼ0、ではない)だろうね。比較のために言うなら、LHCがこの新しい素粒子を発見する可能性は、LHC がsuperparticle や余分な次元やマイクロブラックホールなど超弦理論が予測するものを発見する可能性よりは高い。来年はE8理論によって、LHCが稼働する前にもっと多くの異なる予測をもっと確証をもって行いたい。」

http://www.telegraph.co.uk/earth/main.jhtml?xml=/earth/2007/11/14/scisurf114.xml

ふむふむ、E8てのはリー代数の例外の一つと。うにょうにょした空間で、空間の二つの点A,Bに対して足し算A+Bと掛け算ABが定義できて、どちらも元の空間の別の点になると。掛け算まで定義できる空間はそんなにたくさん種類はなくて、そのなかの一つで一番複雑なのがE8と。その複雑な構造が素粒子の分類とびっくりするくらい似ていると。
以下はLisi理論に関係なく勉強になる記事

まあしかし重力以外の3つを統合する場合が2+3次元の回転SO(5)の構造にそっくりだ、ということも昔から言われているけど理論が確立したわけじゃないし。