複雑系SF

Self‐Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

Self‐Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

複雑系研究室出身の方が書かれたSF。自分も同じ建物の同じフロアで院生してたんで少しオーバーラップあるようだ。
基本的に、頭のいい人が書いた面白くて変な話がたくさん入ってる。基本スタンスは「変な設定」で、その中にまじめな登場人物が放りこまれて、しょうがないから設定にツッコミ入れつつ真面目に設定を演繹する。演繹するともっと変なというか笑える話になる。軽妙かつ真面目な語り口で書かれた馬鹿話。それで変な設定、というかいろんな法則が支配する宇宙を舞台にするために使われる大技がグレッグ・イーガンの「順列都市」であり「ルミナス」である、という感じ。それらを読んで更にいろいろ考えたことがある人ならそのへんは面白く読めるはず。ルミナスの最後が銀河ヒッチハイクの最初につながる、みたいな。あーほだーー!
他の物理の分野に比べると複雑系ってのは、現実はとりあえず置いといて、俺ルールを作ってみて、何が起こるか見てみる、て傾向があると思う。それが現実の何かに似てれば当たり、みたいな。結果は面白いけど現実の何にも似ていない、て話は物理学会で発表すると恐いおじさんに怒られる。

追記

という感じで○○のような話、という形容はそう言えなくもないけど、それは6人の盲人が描写する象のようなもので、局所的には正確でも大局的には矛盾がある。やはり円城塔っぽい、というのが一番正確なんだろう。説明にならないけど。正確に要約するには小説と同じ文字数で説明するしかない。ホワイトノイズは圧縮できない、みたいな。