●G・イーガン『Diaspora』 ISBN:0061057983 【アマゾン】

作者による解説数理物理学者 Baez氏による review
作者のページで一章だけ読めます。古い順に読もうと思ってたらDistress と Diaspora を間違えた。現在第二章読み中。"Schild's Ladder" で、肉体を持たずにサイバースペースにいる人達が出て来たけど、「子供はどう作るんだろう」と思ってた。その作り方が第一章に書いてある。基本的に何人かの意識プログラムを混ぜて子供を作るらしい。そうでない「孤児」は0から作られる。CA上にNNを作り、外界からの刺激で回路が出来て意識ができる様子が書いてあって面白い。でものださんの掲示板で脳に関する話とかを読んだ後では飛躍が目に付く。
第二章は短篇『ルミナス』を連想する話。地上の「公理」から論理のトンネルを通って「命題」の中を掘っていき、新しい「定理」を見つけようとする "Truth Mining" を描いている。
「人物なんて飾りですよ」という感じで、ひたすら面白いアイディアの嵐。



追記:トーラス表面にいる二次元人の見る景色についての描写でひっかかった。外側にいる人から出た光は赤道方向に行くと反対側で焦点を結ぶように書かれている。本当か?計算してみた。トーラスを X=(1+r sin φ)cosθ, Y=(1+r sin φ)sinθ,Z=r cosφ で表す。0<r<1は定数。表面上の曲線を φ=φ(θ)としてφをθの関数にして表す。曲線の曲がる方向は a=(d/dθ)^2 (X,Y,Z)。これが法線方向 n=(sinφcosθ,sinφinθ,cosφ)と接線方向 v=d/dθ (X,Y,Z)の成分以外を持たない、つまり a・(n ×v)=0 というのが測地線の条件。ごちゃごちゃ計算すると
rφ''(1+r sinφ)-cosφ(1+r sinφ)^2 -2(r φ')^2 cosφ=0
という微分方程式になる。厳密解あるかもしれんけど特殊関数あまり知らないんで、r=0.25 の場合について φ(0)=π/2 でφ'(0)をいろいろ変えて数値積分するとこういう結果になった。一点で交わるわけではないし、ちょうど反対側という訳でもない。

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