ハーラン・エリスン『Slippage』 ISBN:0395924820 【アマゾン】

読み終ったー。後半どどーんと熱い作品が多くなって来た。エリスンはこうでなくては。前半の作品で感想を「分からん」で済ませちゃった作品もちゃんとレビューしてるページあります。http://harlanellison.com/review/slippage.htmとか。力の入ったレヴューだなー。分からなかった自分は "brain-damaged moron" だということか。
☆ Where Shall I Dwell in the Next World
小品集。ハックルベリーフィンとトムソーヤがトウェインの墓を掘りおこす話とか(どんな話じゃ!)
☆ Chatting with Anubis
なるほど。面白い話。前の方に載ってる"Darkness upon the face of the deep"と同じくインディジョーンズ風の考古学ネタだけど、こっちはオチがいい。アヌビス神の巨大な神殿に眠る者たち。その以外な正体とは?
☆ The Few, The Proud
宇宙軍の軍法会議で死刑が決まった一兵士の証言。素行が悪くて軍隊を除隊させられたエリスンらしい話かも。この小説に出て来る "Grampa" みたいな人は日本にも沢山いるんじゃないか。
☆Nackles
Westlake という作家の短篇をエリスンが過激にアレンジして新トワイライトゾーンのエピソードとして放送しようとしたけど、過激すぎてTV局の重役がOKを出さなかった。これが元でエリスンは新トワイライトゾーンのライターを降りた。その元になった短篇とTV用脚本、それと事の顛末が書かれている。
うーん、オリジナルにはない人種差別批判にテーマを変えてるけどアレンジが offensive すぎたんだな。それにちょっと不自然な気もする。ここまで offensive にすることはないんじゃないか。まあエリスントリックスターからしょうがないかな。
話の内容は「悪のサンタ」というアイディアに尽きる。
☆ Sensible City
激しく同意。なんでホラー映画の登場人物ってあんなに馬鹿なんだ?
☆ The Dragon on the Bookshelf
ちびドラゴンが頑張る話。なかなかメルヘンチックなお話じゃあござんせんか。シルヴァーバーグとの共作。K
☆ Keyboard
「キーボードが指を噛んだ」という出だしで始まる。ネット中毒者には耳がいたい話かも。ちなみにエリスンはPC持ってません。PCの画面の描写として「気持悪い青緑色」という描写があるけど、WINDOWS のデフォルト背景のことか。
☆ Jane Doe #112
六人の幽霊?に追われる男。喪失感に浸る。
☆ The Dreams a Nightmare Dreams
一言で言えばクトゥルフ。『HRギーガー・スクリーンセイバー』に音声で収録されたものを再録。
☆ Pulling Hard Time
死刑よりも苛酷でしかも人道的な刑罰とは?きつい話。『危険なヴィジョン』にも似た話があったような。
☆ Scartaris
旅を続ける謎の男の、人間のモラルを超越した謎の行動。熱い。他のいくつかの短篇と共通のアイディアを使っている。習作か?同じ素材を味付けを変えて出す感じ。
☆ She's a Young Thing and Cannot Leave Her Mother
めずらしくイギリスが舞台。降りしきる雨が印象的。終盤の急展開が良くてゾクゾクする。