マニア向け

核子内部でのポテンシャル


(上の図、正確には線と球面のなす角度をθとするとV_1=\Omega d R_1^2/\sin\thetaとかです)
三次元で、薄い球殻に一様に電荷が分布している時、その内部ではどの場所でも反対方向からの電荷の引力が打ち消しあって力が0になる。一般の次元dでも、反対方向にある殻を微小立体角で切り取ると体積は距離のd-1乗に比例、そこからの引力は体積÷距離のd-1乗になり反対方向で打ち消し合う。d次元におけるクーロン力は電気力線の保存を考えると逆d-1乗になるから。レプトンの外側の電荷を薄い球殻に分割し、それぞれの寄予を足すことを考えると結局外側にある電荷からの寄予は合計で0になる。
中心から距離Rの位置にいる場合、内側にある電荷の量はRのd乗に比例、それがだいたい距離Rの位置にいるので、おおざっぱにいって力は体積 R^d÷R^{d-1}でRの一乗に比例した大きさの力が中心に向かって(対称性から明らか)働く。これはバネにつながれたおもりと同じ。前に出てきた小惑星の内側の井戸の話も同じ原理。
実際には核子内部に入り込んだりしたら電磁気とは別の相互作用で激しく反発するような気もする。

量子的にはどうよ

平均半径が R程度の波動関数のエネルギーを勘定してみると、不確定性原理  R p \sim hより運動量 p は h/R 程度になる。運動エネルギーp^2R^{-2}に比例。これは何次元でも同じ。クーロン力によるポテンシャルエネルギーはd次元では -R^{-(d-2)}に比例し、五次元では -R^{-3}になる。三次元ではトータルで R^{-2} - R^{-1}になって、Rがある値で最小となるけど、五次元だと R^{-2} - R^{-3}で、Rが小さいほど無限に下がる。三次元の1S軌道のような基底状態が存在しない。

ハイドロンの化学結合

「最初のふたつのレベルは完全に埋めなくてはなりませんが、それにはレプトン十二個が必要です。」

内側は調和ポテンシャルだから各座標独立な量子数を持つ。基底状態は(0,0,0,0,0)。次は(1,0,0,0,0) が5個。それぞれにスピンが違う二つのレプトンが入ると合計12個。
その上の準位は(2,0,0,0,0)が5個と(1,1,0,0,0)が10個の合計15個。これに一個ずつレプトンが入れば原子27になる。しかし幾何学的には5次元で6本の腕が伸びてる方が炭素には近い。炭素では球対称な2s軌道と、x,y,z方向を向いた3つの2p軌道が混成軌道を作って四面体の頂点方向を向いた軌道を作る。五次元のケースも混成軌道が出来るんだろうけど、15本の腕がどう伸びているかは良く分からない。レプトン同士の相互作用や調和ポテンシャルからのズレなどによって縮退が解けると思われる。基底となる関数は(1,1,0,0,0)タイプが\exp(-r^2) xy, (2,0,0,0,0)タイプが\exp(-r^2)(2x^2-1)て感じでどれも偶関数。したがってこれらを線形結合しても一方向に腕が伸びた軌道は作れない。全て反対方向にも対称に腕が伸びた軌道になる。

ところで五次元でもスピンは2つなんでしょうかね。ローレンツ共変になるよう6成分の波動関数を使ってディラック方程式を構成すると、物質、反物質それぞれ3つ縮退したりして。だれか計算してみませんか?

四次元の場合 from P.A.M.Dirac "The Principles of Quantum Mechanics" p.p.255
\{p_0-(m^2c^2+p_1^2+p_2^2+p_3^2)^{1/2}\}\phi=0
p_0とその他が対称でないので\{p_0-(m^2c^2+p_1^2+p_2^2+p_3^2)^{1/2}\}をかける。
\{p_0^2-m^2c^2+p_1^2+p_2^2+p_3^2\}\phi=0
p_0が負の反粒子解が出る。p_0が二次なんで量力の方程式としてはよくない。一次になる式は以下のような形
\{p_0-\beta-\alpha_1 p_1-\alpha_2p_2-\alpha_3p_3\}\phi=0
これに\{p_0+\beta+\alpha_1 p_1+\alpha_2p_2+\alpha_3p_3\}をかける。
\{p_0^2-\sum_{123perm}[\alpha_1^2p_1^2+(\alpha_1\alpha_2+\alpha_2\alpha_1)p_1p_2+(\alpha_1\beta+\beta\alpha_1)p_1]-\beta^2\}\phi=0
これが前の式と同じになるには\alpha_a\alpha_b+\alpha_b\alpha_a=2\delta_{ab}が成り立てば良い。ただし\beta=\alpha_m mcとおく。パウリ行列だと反交換する演算子は3つしかないんで、これには4X4行列が必要。実際には以下の4つ。したがって波動関数も4成分必要。
\left(\begin{array}{cc}0&\sigma_x\\ \sigma_x&0\end{array}\right), \left(\begin{array}{cc}0&\sigma_y\\ \sigma_y&0\end{array}\right), \left(\begin{array}{cc}0&\sigma_z\\ \sigma_z&0\end{array}\right), \left(\begin{array}{cc}I&0\\ 0&-I\end{array}\right), \sigma_aはパウリ行列、 Iは単位行列

反交換する、二乗すると1になる6つの行列を作るには何次元必要?4次元のままで上のにさらに以下のを追加すれば7つまで増やせるので、4成分のままでいいのかも。
\left(\begin{array}{cc}0&i\sigma_x\\ -i\sigma_x&0\end{array}\right), \left(\begin{array}{cc}0&i\sigma_y\\ -i\sigma_y&0\end{array}\right), \left(\begin{array}{cc}0&i\sigma_z\\ -i\sigma_z&0\end{array}\right)
うーむ、しかし角運動量の成分数と空間次元が、三次元ではたまたま一致してる特殊なケースになってるんで、一般の次元はよくわからん。五次元だとL_{ab}, 1\geq a>b\geq 5 の10個の演算子があって、たぶん L12 L23-L23 L12=iL13 とかになってる。L12 とL34は交換(12面と34面の回転は独立なんで)。s=1/2 の時も両方の固有値が同時に確定するんで4種類の状態とかがありそう。
それともスピンと角運動量が三次元ではたまたま同じ性質を持つのか?

Next Highest?

第一励起状態について、 Next Highest Level と原文では書いてあるんですけど、そういう言い方があるんですか?
イーガンのページには|10000>+i|01000> という角運動量の固有状態の絵がありますね。 r \exp(-r^2)exp(i\theta)となります。

状態 エネルギー 角運動量L12 角運動量L34
00000 0 0 0
10000±i01000 1 ±1 0
00100±i00010 1 0 ±1
00001 1 0 0
11000 2 0 0
00110 2 0 0
1000±i01001 2 ±1 0
0010±i00011 2 0 ±1
(10100±i01100)±i(10010±i01010) 2 ±1 ±1


こちらで詳しく考察されています
http://kuiperbelt.la.coocan.jp/sf/egan/Diaspora/diaspora.html