20章

石を回転する話

石を斜めに回転させた時に赤い線の上の点がどのくらい動くかを矢印で書くと、場所によって長さと角度が違うけど、赤い線の方向への移動距離は一定。


作者による解説
http://gregegan.customer.netspace.net.au/INCANDESCENCE/Symmetry/Symmetry.html

<ハブ>からの距離の定義

こっちの世界ではボイヤー=リンキスト座標というのが使われます。以下の式でrがその距離、aは「ねじれ」。
http://en.wikipedia.org/wiki/Boyer%E2%80%93Lindquist_coordinates
作中で「あなたの使ったハブからの距離が二かそれ以下だと」という会話がありますが、これは二人が別の距離の定義を使っていて、一人がボイヤー=リンキスト座標を使っている事を示唆しています。

エルゴ球

「あなたの使ったハブからの距離が二かそれ以下だと、軌道を描いて動く以外のことは不可能になるわ! じっと動かずにいようとすることは、もっとも速い可能なスピードよりも速く動くことを意味する!」

事象の地平を越えてしまうと内側へしか動けなくなってしまいますが、回転するブラックホールではその外側にもう一つ領域があって、内側にも外側にも動けるけど、時空が回転しているのでそれと反対向きの回転方向には動けないという「エルゴ球」と呼ばれる領域が出てきます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%82%B4%E7%90%83

ローレンツ収縮

そんなことをする人は、決して拍動しない心臓と、決して進むことのない時間感覚と、全世界を平らに押しつぶす距離の概念を持つことになる

この手の話をするときは「誰から見て」「誰が」に常に注意する必要があります。