グレッグ・イーガン Singleton

お、SFM に訳が載ってますね。ひとりっ子。まだちゃんと読んでないですが。今気がついたけど量子ネタということを考えるとスピン一重項(singlet) とかけてあるのかな、とか思ったり。EPRパラドクスとかに出てくるやつで、矢印(スピン)をもった二つの粒子が合体して矢印がどちらも向いてない状態のこと。これが「どちらも向いてない」丸いまま左右に分かれて飛んで行って、一方を「見る」と突然矢印になって、反対側に飛んだやつも瞬間的に矢印になるという。 singleton は Java関係の用語でもあるらしいけど。
追記:あ、昔の感想は日記を Singleton で検索してください。
追記:再読して前半の量子ネタの議論のアウトラインが見えてきた。結局「観測による収縮は起こらず、観測によって外界と絡み合う(entangle)ことで相互作用できない状態に分岐していくんだ」という主張を延々している。たとえば完全に揃ったルービックキューブを二つ持ってきて、一方を一つの列だけ180度回転させる。その後で両方に同じ操作をたくさん行い滅茶苦茶にする。スタートの時は一列回せば両方は一致できるけど、ぐちゃぐちゃにしたやつはちょっとやそっとじゃ同じにはできない。始めに回した一列が量子系、それ以外の部分が外界、というイメージ。あるいはシュレ猫の場合だと|原子核が崩壊した>+|原子核が崩壊してない>というのが前者で|猫が死んだ>+|猫が生きてる>というのが後者。しかし Qusp の理屈は相変わらず良く分からん。まあメインはヘレンだからいいんだけど。今ちょうど読んでるゲド戦記4に出てくる Therru とちょっと境遇が似てるかも。性格はかなり違うけど。
追記:ああああ!重大な誤訳発見! density matrix, 密度行列が "destiny matrix" 運命のマトリクスと勘違いされて訳されてます。密度行列は量子系が外界と絡み合って混合状態になった度合いを定量的に表す行列なのです。 http://gregegan.customer.netspace.net.au/SCHILD/Decoherence/DecoherenceNotes.html
追記:あとヘレナ・ボナム・カーターの訳注がバートン版猿の惑星に出てる、ってのがいかにもSFヲタ向けでニヤリ。
追記:そういえば量子ネタ以外の感想書いてなかったけど、他の作品で人格バックアップ取ってる人が躊躇せずに世界線を途絶させてまた復活するのと対極の話だなあ。ヘレンとかそれが可能なわけだけど親は諦めないわなぁ。ええ話や。主人公のMWI狂いも同じと言えば同じだけど、そっちはどうも感情移入が難しい。ハーラン・エリスンの "Chained to the Fast Lane in the Red Queen's Race" ISBN:0395924812 とか似た話だけど、そっちはわりと共感した。 解説で書いてあるネタバレに関しては、そう思って読むとはっきり書いてあるなぁ。気がつかなかったとは不覚。