26章

数値相対論

資料いろいろ

うちらの世界では、まずザックの原理(=アインシュタイン方程式)を満たす時空を設定し、それがどう時間発展するかを計算するのに皆苦労しているようです。この章で行われているのは、最初の、ザックの原理を満たす解を見つける部分です。

彼らの世界では、曲がった時空を少し動くと方向がどう変わるかという「接続」をベースに理論を作っているので、おそらく以下のような計算をしていると思われます。

まず三次元空間を細かい立方体に分割します。一つの立方体は6つの隣接する立方体に接しています。ある立方体から隣の立方体へ移動したときに方向がどう変わるか、という「接続」の量を適当に決めて、その二つの立方体の間の部分に記録しておきます。
ある立方体の中で「3つの重さ」がどうなるかは、その立方体の隣にある6つの「接続」の値から計算できます。適当な値から始めたのでこれはザックの原理を満たしていません。満たすようにするために6つの接続の値からそれぞれ一定値を引いて満たすようにします。
これで解決、にはなりません。自分の右隣にある「接続」は、自分の右側の立方体を担当する人も直したいのです。そして二人が直そうと思っている値はそれぞれ違います。なので妥協して二人がこうしたいという値の平均値にします。二人とも自分の立方体はザックの原理を満たさないままですが、始めにくらべて重さの合計は0に近づいているはずです。
自分の隣の6つの接続についてそれぞれ隣人のしたい値を聞いて自分のしたい値との平均にする、ということを何度も何度もやっていけば、おそらく最終的に全ての立方体でザックの原理をほぼ満たす時空が出来上がります。

作中では6の8乗か9乗の立方体が必要で、それを6の4乗人で分担するとなっているんで、一人当たり6の4乗くらい、1296個以上の立方体を担当します。かなり大変そうです。

こうして時空が完成したら、その中を移動する「物体」の役の人が、各担当者の持っている時空のデータを参考に自分の進路を計算し、立方体から立方体へ、担当者から担当者へ間を渡り歩いて軌道を決定します。