昆虫記載論文の活用

ここ50年以内に記載されたカミキリなどは隠ぺい種が多く、図鑑にあるキーだけでは同定が難しいことがある。特にピドニア。またナガタマムシなども似たのが多く、図鑑+アルファが欲しいところ。
(「なんだこの虫はー!新種だー!」というのは10年に一度くらい。「これとこれ、よーく見たら違う種類、じゃね?(隠蔽種)」てのとか、「この地味な虫は誰も研究してこなかったけど、いままで見つかってたよくわからないのを整理して分類しました」とかが多い)
記載論文には近似種との違いが図鑑より詳しく書いてあったりする。ネットで落とせる場合も多い
まずは記載論文が何の雑誌の何年何頁かをここで探す。
https://gbif.org
たとえばヒスイヒメハナの場合。検索窓に学名pidonia tsutsuiiを入れる。3つほどヒットする。2007年のは東海大図鑑(図鑑で分類変更が行われた場合、図鑑が記載論文となる。英文の解説が図鑑に載っている。月刊むしの場合もある)。2番目のをクリックするとElytra, Tokyo 24 (2): 367-373, 7 figs. (1996).とある
Elytraは日本甲虫学会のHPで公開されている。
http://kochugakkai.sakura.ne.jp/archive/elytra1973.html
ページ内検索で論文タイトル「Notes on the Lepturine Genus Pidonia...」を探すと見つかるのでDLする。
「Remarks. This new species is closely similar to Pidonia signifera」以下がナガバとの区別点。とりあえずここだけ読めばいい。

文献がEnt.Rev.Japanの場合は同じく甲虫学会からDLできる
http://kochugakkai.sakura.ne.jp/archive/jcs-erj.html

ハクバヒメハナの場合。Pidonia paridicolor を入れると
同様に3つでて2つめクリックするとBulletin of the Osaka Jonan Women's Junior College 16: 29-44, 1 pl. (1983)とある。大阪城南女子短期大学紀要。これはネットで落とせない。電子化を進めてはいるようだけど昔のはまだ。稲荷山図書館にある?

トサヒメハナの場合。
https://gbif.org/species/10901108
Kontyû, Tokyo 45 (1): 64-77, 6 figs. (1977)とある。「昆蟲」はこちらで公開されてる
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10387610
ピドニアの場合、ERJ,Elytra,昆蟲でほぼカバーできる。

もっと最近の場合はElytra New Seriesに出ている。サキモリノミハナの場合 Kuboki 2015とあるので
http://kochugakkai.sakura.ne.jp/publication/elytra/elytra-bibliography.html
で2015の(1),(2)を見ると(2)のほうの目次にあるのでDLする。アワノミハナも一緒に記載されている。

もちろん英語だけど、たとえばピドニアを記載する著者は3人くらいなので同じ書き方してて一本根性で読めばあとは簡単。
basal/base基部apical/apex先端anterior前posterior後ろlateral横 pronotum前胸 humeral肩の dorsal背面など。

タマムシ星撮表:関東甲信越福島

関東甲信越+福島で狙えるタマムシをまとめました。
カミキリと違ってよくわからない分布しているのもいて、タマムシ屋さんの活躍によってはもっと増えるかも。
全般的に、本州四国九州の範囲では西にしかいない種類が多いようで、東限は種によってまちまちのようです。
色はむし社図鑑の珍品度に対応。

  • 緑:星1-2 ふつう
  • 黄色:星3 割と珍しい
  • オレンジ:星4 かなり珍しい
  • ピンク:星5 日本で1例しか採集例がないものから全国で数か所しか産地が知られていないものまで

生態写真は「★」つき

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ナガタマムシ三種

去年撮影したものです。

使用機材:https://ita.hatenadiary.jp/entry/20180816/p2
クリックで拡大。★は初見。

ヤマジナガタマムシ

2021/6/20 ムネアカメダカ狙いでよく行く場所へ。屋外で成虫が出ている時期のはずだけど曇りで気温低く、テンションあがりません。でもやることないのでヤケクソでエゾエノキを掬っていたら小さくて黒いナガタマ。たぶん見たことないやつ、と思い持ち帰りました。
タマムシ大図鑑で調べ、まずエゾエノキということでヤマジが候補に。図鑑での珍品度★4つで、カミキリでいえばアルマン~オダイあたりでしょうかね。やりました。ちなみに★5は伝説レベルで狙って取れないとか全国で数か所しか産地が知られていないとか。

記載論文の図と比較。図鑑にも横からの写真はあるけど、やはり線画でないと分かりにくい。一致してますね。

前胸腹板突起が三叉状というのも一致。

前胸、エリトラ形状、サイズも一致。

ツヤケシナガタマムシ

こちらは夏に茨城で柿の木を掬って得たもの。
結構ヤマジとツヤケシ似てますが、ツヤケシは前胸腹板突起が三叉でない。


不明種

多分トガリバシラホシで、確保してれば茨城県初記録だったんですが(茨城県タマムシ科甲虫目録,水戸昆虫研究会るりぼし47, 大桃定洋, 2018年12月)、クロナガかなーと思い確認のため撮影、そのあと確保しようとしたら逃げられました。悔しくて、その後何度か再挑戦したけどダメ。菌が回った栗の立ち枯れでした。ふつうはそういうのに来ないと思うから、たまたま来たんでしょう。

アサギナガタマムシ

こちらはどこかの材から出てきたもの(昔のことで忘れた)。身近にいるようなんで今度生態写真狙います。

虫2021

まだ書いてない記事がいくつかあります。
まずは書き始めないとね。以下のことについて書く予定。
2020夏 北海道。河原の折れたエゾマツ。夜は普通種いっぱい。昼はヒメシラフヒゲナガ。山でシララカハナ生態写真。スミイロいない。新鮮なエゾマツ倒木を原生林で発見。一日これに賭けてブヨと戦いつつ熊を警戒して待ってたのにシラヨツしかこなかった。河原でヤマナラシにヤマナラシがいた。網を車においてきて降りてこないヤナギトラをずっと眺めてた。柳を探して走り回るも二回目はなし。しかしエサキキンヘリの生態写真をとれた。
Update:とりいそぎ写真だけアップ
https://ita.hatenadiary.jp/entry/2020/08/23/000000
https://ita.hatenadiary.jp/entry/2020/08/24/000000
https://ita.hatenadiary.jp/entry/2020/08/25/000000
https://ita.hatenadiary.jp/entry/2020/07/26/000000

2020秋 京都大阪セダカ決戦。足が棒になって皮むけまくりヤマビルにつかれたが、それごときで見つかる京阪のセダカではない。
2021 6月。曇りで納得いかないも信越国境。オオハンモ時期を外した。納得いかずエゾエノキ掬ってるとタマムシ図鑑★4のヤマジナガタマをゲット。これで調子に乗って茨城でナガタマ何度か探す。サトウ狙いだったが偶然トガリバシラホシが入るも確保に失敗して粗い写真しか残らず。確保してれば県初記録だった。くっそー。その後何度か炎天下で狙ったがだめだった。他にツヤケシナガタマ自己初。
2021 8月28日。シナノサビ本気で狙う。富士五湖周辺、モミがキーワード。地図で見つけたモミ群落にまず直下の集落から登る。地理院地図では歩道があったが、行ったらなかった。斜面這って登る。夜回りがメインの予定だったが昼でも危ないので撤退。別のルートで攻める。重機なら通れそうな歩きやすい道(地図では車道)を夜に1kmあるくルートでいった。新鮮な倒木に来るらしいけど、都合よくあるとは思われないので、ヤニの成分である揮発成分と固形成分をアマゾンで買って現地で混ぜる作戦。過去の記録によるとヤニを舐めて集まっていたという。しかし新鮮な倒木があった。両方使って夜回りしたがヒゲナガモモブトが運動会、あと手持ちLEDにヒゲナガが飛んできたくらい。倒木新しすぎたか?3週間ぶりの遠征でボケており、LEDライトを忘れてきた。モバイルバッテリーの照明機能でしのいだ。

今年の自己初はヒコサンヒゲナガコバネ、ヒスイヒメハナ、ヤノヒメハナ(ブナ帯分布sp)、キイノミハナ、オダイ、サハリン、ヒメヨツ。東日本での未見種トライ状況は以下の通り。
ジュウモンジ:コロナで狙えず。ソーラーバブルおわってまう。シナノエゾラギ:遠出が億劫で。フトキクスイ:タイプ産地の京都で狙おうかと思ったけど行けず。高尾のは多分フトじゃないね。クロヒラタ:狙ったけどだめだった。2020はかつての多産地が復活の兆し?という感じだったが2021は取れた話を聞かなかった。オトメ南ア:北沢峠がー。タケウチホソハナ:富士山、七面山で狙ったけどだめだった。ギガン;パス。ヨツボシ:うーん。ムネアカメダカ:狙ったけど時期が中途半端で成虫にはちと早く枝は拾いつくされてた。トゲムネアラゲ:情報不足。カスガキモン:いいシデ倒木あったんだけどだめだった。
タケウチに関しては、北海道で本州より多いことからホストはトドマツかエゾマツ、トドマツならもっと多いはずだからエゾマツなんだと思う。本州でトドマツはオオシラビソ、エゾマツはトウヒとそれぞれ変種になっているのでトウヒなんだろう。奈良の大台ケ原がたしかタイプ産地だけど、あそこもかつてはトウヒ原生林だったようだし。
新顔として福島平野部でサビイロクワという移入種が街路樹に深刻な被害を及ぼしている。あとは日本海側ブナ帯の隠ぺい種とか。

去年の夏に大隅で切ってきたホソバタブの枝、春にヨコヤマヒメ4、ヨツスジトラ1。粗い木屑も出てたので何かと期待してたけど11月の今も出ている。ほぼホシベニ確定。ルフェとかノルティアを期待してたんだけど。

ピドニア星撮表:全国版

工事中
亜種、遺伝的に同一な地域変位、置換種などの関係にある種は同じ背景色にしてます。
また別種の噂のあるものを聞いたことあるものすべて節操なくぶっこんでます。ナガバもうわさがあるけどよく知らない。

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身延七面山

【背景】

身延七面山は日蓮宗の修行の山であり、多くの信徒が標高差1200mを登りお参りする。寺のさらに300mほど上の山頂(1982m)まで、ブナ林と針葉樹林を擁する。ニセハコネホソハナカミキリの記載にはこの山の個体も用いられた[文献1]が山梨県での記録はこの1件のみである。また訪れる虫屋がほぼいない

【目的】

ニセハコネの生息確認、また本種と同所、同時期に記録が多いキベリカタビロハナ、ヒメヨツスジハナ、さらに根拠はないがタケウチホソハナがいたらいいなー。南ア前衛山なのでタカネヒメハナ、シナノヒメハナも、ダケカンバのいい立ち枯れがあれば探す

【手法】

COVID感染防止のため、前日夜に自宅周辺で車を借りて3時間運転し登山口へ。車中泊ののち、お参りの人の邪魔にならないよう夜明けとともに登山開始。山頂まで行きノリウツギ・リョウブの開花状況を把握、なるべく高い標高で張り付く。リミットは下山、運転、車返却を考え14時。実は以前見当違いの目標を探しに上ったことがあったが、高尾山並みに整備されて歩きやすかったので今回は登山靴でなくメレルの靴で登った。全く問題ない。標高差1600mを登ったけど実質1000m程度かな。

【結果】

寺の少し下、ブナ帯上部の標高1550m付近で満開のノリウツギを発見。ここから頂上までは他に花がなかった。パキタにはもう少し高度が欲しい。まだ日が当たらない時にニセハコネを狙い掬うもハコネのみ。早い時間にブチヒゲ飛来。イガブチなし。フタコブ1発見、図鑑に出てる下部産の緑っぽい色。パキタこない
日陰の花でホソハナ系の飛び方をする虫を探すもおらず。コウヤもほとんどいない。ブナ帯の常連は一通り飛来(フタヨツマルヤツ、チビハナ、キヌツヤ、ツヤケシ、アカ、コヨツ、オオヨツ、ヒゲジロ、ホンドアオバ、ニンフ、タテジマ)。フタスジハナが小型のため小さめのヨツスジと紛らわしい。飛んでるのをみて、これもしかして?って掬うとほとんど小さいフタスジで、ひとつだけ当たりだった。ヒメヨツ自己初!これタダヨツだろなーと掬うとタダヨツだった。
他にヤニの出てるコメツガ、大きなカラマツなどもあったがゼブラ、ミドリヒメスギなどの探索には時間を割かず。

【考察】

今ある花までは登山口から標高差1000m程度であり歩きやすい登山道なためハードルは低いが、それに見合う成果があるかというと疑わしい。山頂は全く展望がなく面白くない。

【参考文献】

[1] 「日本および台湾産ミヤマホソハナカミキリ属について」大林・高橋 ENTOMOLOGICAL REVIEW OF JAPAN VOl.40(2) pp.85-93 (1985) (http://coleoptera.sakura.ne.jp/ERJ/ERJ40(2)1985.pdf) (2メス, Shichimenzan, Yamanashi Pref., July:11, 1977, K. Aoki leg)

富士山

ヒメヨツスジハナカミキリ★

ふ節がながく、スーパーモデルなみのプロポーション