大傑作SFどんどん出てます

気合入れて紹介すべき傑作がたくさんあるのですが、提督業にかまけてさぼっておりました。

皆勤の徒 (創元日本SF叢書)

皆勤の徒 (創元日本SF叢書)

異形の描写、異形の用語、とんでもなく高密度な文、もふもふな「ももんじ」、青春、ハードボイルド、世界の謎、そして著者自身による精密な挿絵。さきごろ日本SF大賞を受賞。
作者の酉島さんは僕の甲虫マクロ写真も見てくださってるんでうれしいかぎり。
甲虫の点刻に惹かれる人は読んで気に入ることうけあい。

The Arrows of Time: Orthogonal Book Three

The Arrows of Time: Orthogonal Book Three

Kindle版。イーガンの「4+0次元」直行宇宙三部作ついに完結。すばらしいクライマックス。
一巻で相対論、二巻で量子論の発見が描かれ、さらに生殖に関する大革命で社会変革が起こったり宇宙ミッションがあったりしましたが、第三巻では「時間の矢」の問題、自由意志と決定論などの超大ネタがメインとなります。
未来から情報を得るデバイスが開発されるのですが、それによる社会の変化や科学技術の発展への影響が描かれます。

小説で先が見えてしまうことで面白い話が書けるのか、という疑問を持つ人もいるかもしれませんが、これが見事に面白いのです。なんていうんだろう、時間が逆転したベイズ統計みたいな?

実はイーガンはこういった時間の問題に取り組んでいる物理学者のblogにちょくちょく顔を出しており、そこでの議論が土台になっているようです。
http://www.preposterousuniverse.com/blog/2007/12/03/arrow-of-time-faq/
http://www.preposterousuniverse.com/blog/2008/12/24/have-a-thermodynamically-consistent-christmas/
http://www.fqxi.org/community/forum/topic/318