ジャック・ヴァンス『魔王子』シリーズ 1/5

イタラ・ミツロー『ホニンの魔王子』より
…私がこの「魔王子本」と呼ばれる五冊の稀覯書を求めるようになった経緯については既に述べたところであるが、ここでは私の住む惑星ホニンでのこの本の探求について述べたい。もともと「魔王子本」はホニンに近い星系にある惑星アカリメで書かれたものである。アカリメでは特にこの分野で傑出した作家を多く輩出しており、ここホニンでも彼らの作品の需要は多い。ヤハワカ・ボショーはホニンにおいてそういった作品の流通を担っている人物であり、他の同業者に比べると力こそ弱いものの、オタ(*)を中心とした一定の支持基盤を得ている。ヤハワカ・ボショーの際立った特徴として、同じ本を数年以上継続して入手可能な状態にしておくことが極めて稀である点が挙げられる。ホニンの住民はヤハワカに依存する他に本を入手する手段を持たず、それゆえヤハワカが気まぐれに過去の名作を再び流通させるというニュースに一喜一憂して暮らしている。魔王子本も、数十年前に翻訳師アラサクによってホニン語に翻訳されハヤワカが流通させたが、すでに入手が困難になって久しい。私が発見した最初の一冊は、ブ・コフ(**)の市場で他の大量の書物と一緒に無造作に売られていたものを破格の値段で入手したものだった。…

  • * オタ:ホニンの一種族で、専門的知識を有するが社交的な能力が低い
  • **ブ・コフ:ホニンによく見られる古書市場。

犯罪の帝王、謎の5人の「魔王子」を倒す5冊シリーズの一巻。FT寄りSFと思ってたら、SF風探偵小説っぽかった。魔王子は誰か分からないので、デスノートみたいな打々発止の駆け引きが必要になります。
ヴァンスといえば変な名前です。マラゲートとかサジローとか、独特です。惑星グッフナルメンは鼻から咳を二回するような発音らしい。サザエさんの「ンッガックック」みたいな感じか。