グレッグ・イーガン『ひとりっ子』

ひとりっ子 (ハヤカワ文庫SF)

オラクルの訳語チェックをさせていただいた関係で、早川書房からエアメールで一冊送って頂きました。郵送代が本代の半分くらいになっちゃいました。有難うございます＞山岸様
でもこちらで売上げに貢献したので許してください。

解説にも書いてありますが、イーガン入門としては前に出た二冊の短編集の方がお薦めです。この本はイーガン欠乏症に悩む人向け。内容もハードで、とりあえずハッタリでもいいから不完全性定理について蘊蓄たれることが出来る人向け。本当に欠乏症に悩む人だと、収録作の大部分をSFマガジンに掲載された時点で読むとか、作者のサイトで公開されている英語テキストを読んでいると思うので、WEB上での感想の出だしが遅いですね。

かくいう自分は「真心」のみ未読。一生外れない精神的貞操帯の話。うわー。
既読分の感想はこちら。

板倉がちゃんと正しい物理用語を選んだかチェックしたい人は、たとえば『オラクル』中の以下の文を検証してください。著者のHPに全文があります。

Quantum gravity involves four complex dimensions, but the only classical solutions -- the only geometries that remain in phase under slight perturbations -- have curvature that's either self-dual, or anti-self-dual. Those are the only stationary points of the action, for the complete Lagrangian. And both solutions appear, from the inside, to contain only four real dimensions.
It's meaningless to ask which sector we're in, but we might as well call it self-dual. In that case, the anti-self-dual solutions have an arrow of time running backwards compared to ours.