本:グレッグ・イーガン 『行動原理』(原題 Axiomatic)山岸真訳、SFマガジン 2004年4月

イーガンらしい作品。犯罪被害者の遺族とか、「なんで家族が死なねばならなかったのか」と必死で問うわけですが、そういうのが一つのテーマとなってます。なんかタイムリーですけど狙ってたのかな。似たテーマだとハーラン・エリスンの "The Avenger of Death" (短編集 "Angry Candy" ISBN:0395924812 に集録)なんかが印象深いんですが、非常に人間的な答を出すエリスンの作品と対極にあるこの短編の衝撃的なオチはイーガンらしいです。
もう一つのテーマはテクノロジーの発達による価値観の激しい変化。なんといっても「価値観」をインストールできるのだから、「価値観」に対する価値観も変わって来ます。お望みであれば価値観に対する価値観もインストールできます。
以下小ネタの列挙。ティーングループの「バイナリサーチ」って名前は若干複雑なアルゴリズムの名前だけど本職のプログラマには常識なアルゴリズム。犯人の刑期は典型的な囚人のジレンマ。「HAL9000 が三原則の第一項を破った」は説明不用。笑える。