グレッグ・イーガン "Oracle"

著者のページでオンラインで読めます。
主人公1:『Nescia 国ものがたり』というファンタジーを書いているオックスフォードの教授。敬虔なクリスチャン。
主人公2:元長距離ランナーでホモの数学者。戦時中に暗号の仕事に関わる。
誰かに似てる二人ですが、別の世界の話なので作中での名前は違います。ストーリーは並行世界&歴史改変モノ、というところでしょうか。その辺のカラクリはエヴェレット解釈がどうとか、反自己双対 Yang-Mills 方程式がどうの、とちょっと説明があるけどはっきり言ってどうでもいいです。タイムパラドクスを起こさずに歴史を改変する理屈は面白いですが。しかしなんといってもこの作品の白眉は、前述の二人がBBCのテレビ生激論ショーで行う議論です。議題は主人公2がこっちの世界で実際に当時物議をかもした話題。主人公1がすごくいい!こっちの世界のファンの人もきっと気に入るでしょう。



ところで、久しぶりにホフスタッターの『GEB』読み返したんですが、けっこう衝撃です。この本を書いたときの作者は今の自分と同じ34才。うーん、この人は修論ですでに磁場中周期ポテンシャルのエネルギー固有値が奇妙な振るまいをするという大発見してんですよね(GEBにある「ジン図」)。かなわんなぁ。

2006年10月追記

最後の若いハミルトンは何者なのか。考えられる可能性としては
1) 妻に治療を受けさせた分岐のハミルトンが夫婦ともに長生きして、スキャンあるいは宝石のスイッチによって脳をQUSPに、体を機械に替えて100年以上長生きして、その間にストーニイが分岐間タイムトラベルを開発、ハミルトンはその間にキリスト教を捨てる。そして違う決心をした分岐の自分を救うためタイムトラベルして分身を集め、Closer みたいなテクニックで人格を融合する。しかしなぜ葬儀の日に来たのか分からない。死ぬ前の妻も一緒に連れて来てスキャンして融合すればいいはずなのに。また別ハミルトンがそんなに簡単に宗旨変えしたり本ハミルトンが人格統合に同意したりするかどうかも疑問。
あるいは分岐後も様々に分岐して、普通に生きてるハミルトンの分岐はこういう誘惑をしに行こうとは思わないけど、たまたま悪魔的になってしまった分岐がやってきた、てことでしょうか。自分の分岐を強化するために勧誘活動をしてるという。こうなると本当に悪魔。

2) ハミルトンの信仰心を試すために使わされた天使 or 誘惑するために来た悪魔。話的にはハミルトンがこう解釈して矛盾がないように意図してるはず。ルイスは神は全知全能だけど人間や天使に自由意志を行使するだけの余裕を与えたと考えてたらしい。それで誤った選択をすると地獄にいっちゃうと。

3) 全部夢^^;

ルイスと自由意志、参考リンクhttp://www.ice.nuie.nagoya-u.ac.jp/~h003149b/lang/p/notes/fragment.html
多世界解釈と停止問題オラクルに関連したモトネタ Phys. Rev. D 44, 3197 - 3217 (1991)