ゼラズニイのアンバーシリーズ復刊投票のページ、投票しましょう。今やっと半分の50票。今年は別の作家による続編、「アンバーの夜明け:混沌の九王子」も出版されます。オベロンが主人公の話。


●ジョン・クレイマー『重力の影』 ISBN:415011157X 【アマゾン】, 早川文庫SF

近所の古本屋で100円ナリ。主人公が自分と同じ物理のポスドクということで購入。作者は天体物理の人らしい。イーガンみたいな頭使うSFかと思ってたけど、普通のハードSFだった。作者曰く、基本は実際の科学理論を用いつつ、その先は空想科学をうまく継ぎ木してそれっぽく見せる、というポリシーの模様。イーガンとかだと継ぎ木した後も実際の科学の方法論で進んでいって頭使うんだけど、そういうのではなかった(といってもヒモとかツイスター理論とか門外漢なんだけども。でも言葉使ってるだけで、概念そのものを知的遊びのネタにしてる感じでは無かった)。そのかわり物理屋さんの日常がリアルに描かれてて面白かった。ラブストーリーは理系オタの妄想っぽいけど(笑)。
しかしコンピュータ関係に関する記述は時代を感じさせる。「理学部のVAX」で皆がメールから論文書きから全部やってるとか、9600ボーが高速通信の代名詞として使われてたり。
それに今じゃフィジカル・レビュー誌は原稿受付、校正刷りの確認、レフェリーとのやりとり全てWEB ブラウザで出来るし。
ともあれ、冒険物としては素直に楽しみました。



イーガンの「プランク・ダイヴ」を作者のページからダウンロードして読んでる途中。
んー、なんかいきなりファイマンの経路積分の話が出て来たぞ。ファイマンダイアグラムとかも出て来てるし。えーと、これはφ4の摂動とかじゃなくて、光子がニョロ線で書いてあるようなやつの話か。
そいでペンローズが作った、時空の性質をあらゆる可能なネットワークの和で表す理論、とか書いてある。う、知らない話だ。……で調べてみると実際ある理論らしい。時空を三角形のメッシュで切る全ての方法に関する和というのは聞いたことだけあるけど全然分かりませんです。
各ネットワークにどういうウェイトを割り振るか、という方法の一つに、各線の上に量子スピンを置いて頂点に何か演算子置いてトレース取ると基底に寄らない、トポロジーのみに依存するウェイトが出て来るのでそれを使う、ってのがスピンネットワーク理論らしい。たぶん。で曲率というパラメータがあって、これをいじると主なウェイトを占める形が突然変わって相転移を示す、ってな話なのかな。イーガンのサイトにある長編、"Schild's Ladder"の解説で、JAVAアプレットで簡単なグラフのウェイトをこのパラメータの関数として表示するのがある。で、これをなんか発展させて "spin-foam" 理論てのをBaez という人なんかが作ったらしい。あ、こないだの日記に書いた、数理物理のメルマガみたいなのの中でイーガンの書評してた人だ。でこのモデルを計算機で計算する場合の高速なアルゴリズムに関する論文を、この理論の専門家とイーガンが共著で出してるじゃぁないですか。うひゃー。ここ→gr-qc/0110045で読めます。読んだけど、これだけじゃさっぱり分からん。この理論のレビューを読まなきゃだめか、でももう趣味の域を越えちゃうな。
で、小説 "Schild's Ladder"の中では Baez が今世紀初頭の十年でこの理論を目覚しく発展させることになってるらしい。さーどうなることやら。