Singularity Sky ISBN:0441011799

本:チャールズ・ストロス特異点の空』 "Singularity Sky" ISBN:0441011799

読み終わる。米アマゾンのレビューでは21人の平均で3.5/5.0点となってますが、概ね正確だと思います。面白いけど、ヒューゴー賞は無理なんじゃないかと。読んでないけどダン・シモンズの長篇とかの方が面白そう。
今月のSFマガジンで時空何とか特集があって、ホーキングとかの文が掲載されてますが、モロにその辺のネタが Singularity Sky のメインになってます。「タイムトラベルが可能なら、なんで未来人がやってこないんだ」という論法があるようですが、超未来の謎の超知性が21世紀にやってきて、人類を勝手にワープさせていろんな星に強制移民させたという設定。人類もタイムトラベルできるけど、歴史を変えて超知性の未来での出現をおびやかすようなことをすると文明ごと消滅させられちゃいます。舞台となる星系は旧共産圏の人が主に移住した星で、封建的社会。革命運動をして辺境の星に流されてる人が第一の主人公。この星に謎の "Festival" という艦隊が出現して、政府に規制されてる技術を住民にガンガン与えたもんで革命が起こって大騒ぎ。これを制圧しようと本星から「帝国艦隊」が派遣されます。艦隊の作戦は一旦未来へ飛んで、そこから過去に戻って奇襲するというもの。しかし下手をすると超知性に星系ごと消されるので、国連から「因果律破壊兵器」の使用がないか監視するオブザーバーが派遣されます。これが加速装置を埋めこんだスーパーウーマンでもう一人の主人公。さらに戦艦を作った MiG 社からワープドライブのアップグレードのため派遣されたエンジニア(実はスパイ)が三人目の主人公。
ストーリーは時間ものなんで複雑なストーリーライン(というかワールドライン)を期待してたけど、意外とあっさりしてたんで不満。超知性とかもあまり絡んでこないし。あとはいろんな分野のジャーゴンが説明もなしに嵐のように繰り出されて、自分の知ってる分野だとニヤリとするけど知らないと検索してからなるほどと思ったり。21世紀にはインターネット・エンジニアリング・タスクフォースが国連業務を引き継いでるそうで、レビューを読むとスラドな人達はすげー笑ったと書いてあるんでちょっと調べてみたら、ああそういうことか、と分かったり。
戦闘シーンは、宇宙での戦闘を物理的に真面目に考えたらこうなる、という感じで興味深いです。ワープドライブとか使ってるけどいちおうニュートン力学で動いてる感じです。
登場人物はいろいろキャラが立ってて面白いです。ヨボヨボで死にそうな提督とか、セサミストリートみたいなキャラとか。
その他英語で読む人用のメモはid:ita:00010201 に。