マニア

カウフマン・ネットワーク

生物の遺伝子には髪や皮膚や筋肉などあらゆる種類の細胞の作り方が書いてあるが、状況に応じてどれか一つだけが選ばれて実際に作られる。たとえば周りが皮膚の細胞ばかりだと、化学的なトリガーによって皮膚を作るプログラムだけが発動し皮膚が作られる、という具合。
こういう仕組みが働くには、外部の刺激に対する安定性と不安定性がちょうどバランスしないといけない。安定すぎるとトリガーが働かず一種類の細胞しか発現しない。不安定すぎるとちょっとした刺激でホクロになったりイボになったり、ガンになったりする。
このちょうどいいバランスを再現する簡単なモデルとして研究されてるのがカウフマン・ネットワーク。基本的には二値セルオートマトンで、ライフゲイムみたいなもの。しかしライフゲイムは常に隣接する8つの変数を参考に次の状態を決めるが、カウフマン・ネットワークはあらかじめランダムに何個かの点を選んでおいて、それを見て決める。さらに次の状態を決めるルールは、各点ごとに違う。他の8つの点を見て決める場合、可能な場合の数は2の8乗=256通りで、それぞれの場合について次の自分の状態が ONになるかOFFになるかのルールが各点で決められている。
このルールを決めるとき、何も考えずにランダムにルールを決めてやっても、おもしろいパターンが出るらしい。具体的には周期的変動を繰り返すパターンになるけど、カオスと違って初期条件を少し変えても安定で同じパターンに落ちつく。しかし大幅に初期条件を変えると違う周期パターンに行くらしい。このパターンの種類も豊富で、変数がN個ある場合、だいたい√N に比例した数だけあるらしい。実は生物でも遺伝子の数がNの場合には細胞の種類は√N 程度になることが経験則で知られているそうだから驚き。