本:ハーラン・エリスン "I have no mouth, and I must scream" Audio CD ISBN:1574535374

☆ 「聖杯」("Grail", テキストは ISBN:1883398460 に収録)
文字通り聖杯探究の物語。サトクリフのアーサー王伝説の本では、聖杯を手にすることは「神の愛」の光に浴することを意味していた。ランスロットはそれに手が届きそうで届かなくてつらい思いをする。しかし現代人は「神の愛」なんて要らないから、本作品では聖杯は「真実の愛」が具現化したものであるという設定になっている。ある平凡な男がこれを手に入れる方法を偶然知り、一生をその探索に捧げる。はたしてそれは何なのか。
オーディオCDのイントロで作者は相当労力を注いで書いたと言ってる。エリスンの作品にはよくあることだけど、マイナーな固有名詞がずらずらと並ぶことがある。本作品ではこの聖杯を所有していた歴史上の様々な人物を列挙する所とか、主人公が探索するのに使う世界中の様々な文献の名前とか。そういうのをリサーチするのに手間がかかってるらしい。「タナカ・カツミ」という日本の詩人の詩も引用されている。
作者は「おれには口がない、…」の2763倍良い作品だと言ってるけど、うーん、結末とかは「おれには口がない」の方がインパクトあったな。