「かはくオープンラボ」国立科学博物館新宿分館
行って来ました。目的は高校の同級生が拾ったリュウグウノツカイの死体。十年以上前だけど拾った連中は石で表面に落書きしたらしい。その後国立科学博物館に寄贈されたと聞いたんで昔上野の本館へ行ったけど無くて、新宿の方にあると教えてもらった。
で昨日は分館の魚の標本の担当の研究員の方に聞いてみたけど、リュウグウウノツカイは公開してなくて、標本は何体かあるけど該当するのは思い当たらないという答えだった。
一番長く見てたのは昆虫標本。半翅目の棚は全部見た。変な形のツノゼミとか、金属光沢のあるカメムシとか。鞘翅目も全部見たかったけど人が多くて見られなかった。タマムシの標本を解説してる研究員の人がいた。光沢は何十年も失われないらしく、非常にきれいだった。鳥が光るものを嫌うので食べられないように光沢があるんじゃないかという話だった。
帰る時に小冊子を三冊購入。『ボルボックスとその仲間』『ツヅミモ類の世界』『変形菌の世界』。変形菌はいわゆる粘菌、slime mold。マニアが多いらしく、Google検索すると力の入ったページがたくさん見つかる。



ボルボックスたくさんページがある
最近のDNA解析では並行進化を示唆する結果があるとか、面白い話が載っていた。ちなみに上記冊子の著者のページはこちら
ボルボックスは回る: WHY & HOW を考えてみた
ボルボックスは、葉緑体と鞭毛を持った単細胞生物クラミドモナスから進化し、複数のクラミドモナスが球状にかたまったような形をしている。水中を回転しながら泳ぐけど、光に向かう性質があるらしい。微生物がたくさんいて濁った水なんかでは光に向かって進んで水面近くにいたほうが光合成に有利となる。単細胞のクラミドモナスも同じような性質を持っていて、体の回転と光を感じる器官を使ってこれを実現してるらしい。ここに解説あり
で、ここに解説されているように、流体は小さいスケールに行くほど粘性抵抗が増し、水の中を泳ぐ微生物は人間が水飴の中を泳ぐような感じで、「いきおい」というのがほとんど効かないから、速度がほぼ推進力に比例する世界。体が大きくなればレイノルズ数が高くなり粘性が減るので、ボルボックスのように進化して大きくなるというのはエネルギー効率の面から見て自然かもしれない。
それで面白いのはボルボックスの各細胞はたがいに意志疎通しなくても全体で一方向に協力して進むことができるという点。研究によればボルボックスの各細胞は光が明→暗と変化すると鞭毛が良く運動し、暗→明と変化すると運動を控えるらしい。回転軸に対して斜めに光が当たると、日陰の部分がよく運動するので結果として光源方向に進むことになるらしい。ということで回転は光源に向かう運動に必要なことらしい。そいえば日陰のやつばかりが頑張っていたんでは光合成できなくて死んじゃうから、そういう点でも回転は必要なのかも。
でもどうやって回転しているんだろう。粘性があるから、一度回転すると角運動量保存則で回り続ける、という訳にはいかない。積極的に回転のためのエネルギーを供給し続ける必要が有る。各細胞がまっすぐ泳ぐと、力は重心方向に働いてトルクは生じないから、やはりクラミドモナスのように光の刺激に応じて鞭毛の運動の方向を変えているのかな。その場合クラミドモナスと同じ制御プログラムでOKなのかな。そもそもクラミドモナスはどうやって回転してるんだろう。体の形がスクリューみたいで、進むと自動的に回るのかな。もうちょっと検索してみるか。しかし生物シロウトな自分でも検索でいろいろ調べられる。いい時代だ。