小論文:All your base と私

「骨と回路の金、古びたレースに、粘土を丸めた鈍く白い玉。マルリイは首を振った。いったい誰が、こんなかけらを、こんな屑を並べて、こんなふうに心をとらえ、釣り針のように魂を引きつけるものを作れたのだろう。」
『カウント・ゼロ』ウィリアム・ギブスン黒丸尚

"All your base" の生みの親、今は亡き(株)東亜プラン。この会社の素薔薇しいセンスは国内向け作品のタイトルにも現れている。『怒首領蜂』(どどんぱち)『ドギューン』『鮫!鮫!鮫!』などなど。こんな名前を考え付く人間は、 神と交信しているとしか思えない。
昔「ダライアス」というゲームの、「W面」という最難面をプレイしている時のこと。すごいスピードで迫る大量の敵の弾。普通の自分なら一瞬でやられてしまうけど、その時、突然、弾の動きが「見える!」(声:古谷徹)ようになった。
脳の動きは<ストレンジアトラクター>のような、非定常な定常状態だ。あの瞬間、極限状態で思考の軌道が新たな相<フェイズ>にシフトしようとするのを、感じた。セナのようなF1ドライバーが、「スピードの向こうに神を見た」というのは、恐らくこういう感覚なのだろう、と思った。
異様に進化し一般人を寄せ付けないシューティングを作り続けた東亜プラン。その中心にいた人間達が「神を見ていた」ことは、疑いようもない。微妙に外したニュアンスで人の魂を惹きつけて離さない「All your base」、それは頂言者の言葉だったのだ。
参考文献:「美食倶楽部バカゲー専科」