まだ少ししか読んでないけど、見切り発車

ハーラン・エリスン『Angry Candy』 ISBN:0395924812 【アマゾン】

例によって長い前書き(収録されている短篇の半数は前書きより短い)は、エリスンの友人の葬儀の話から始まる。1985年から1987年にかけて、エリスンの知人がたて続けに亡くなる。その中にはシオドア・スタージョンアルフレッド・ベスターもいる。死に直面しエリスンはいろいろ考える。しかし、
No, it isn't anything. You think it; but it isn't anything.
考えたところで何にもならない。そしてエリスンは怒る。なぜ彼/彼女が死なねばならないのか、と。
世の中の矛盾や宇宙の不条理に対しエリスンは怒る。知人の死に直面した時、エリスンの研ぎ澄まされた感性は安直な慰めや陳腐な感傷に流されず、痛みと悲しみに正面から向かい合う。この本に収められた短篇は、その痛みと悲しみが高純度の結晶となったもの。それは読者の心の中で融解し、エネルギーを与えてくれる気がする。
以下はネタバレありません。
☆Paladin of the Lost Hour
墓地で出会った青年と老人。二人は深い悲しみを背負って生きていた。ひょんなことから二人は共同生活を始めるが、老人の持つ不思議な時計が、、、、「トワイライトゾーン」の1エピソードのような話。
☆When Auld's Acquaintance Is Foregot
街の「メモリーバンク」で引出しを断られた男に闇バンクの代理人が話をもちかける、、、
☆Escapegoat
ショートショート
☆Footsteps
オチがまだ理解できないので考え中。

●『20世紀SF(5)1980年代』 ISBN:4309462057 【アマゾン】

とりあえず読んだやつだけ。
コニー・ウィリスの短篇
量子力学って「分かる」もんじゃなくて「使う」もんなんだよなー。マクスウェルとか、流体とのアナロジーマクスウェル方程式を考えたし、実際に渦とか吸い込みとか具体的イメージを考えることで非常に分かりやすくなるんだけど、こと量子力学に関する限り、量子力学に特徴的な現象ってのは日常生活には全く現れないから、いくらアナロジーやメタファーを重ねても分からないものは分からない。で、分からなくても理論を使っていろいろ計算したりしてる内に「そういうもんだ」という感じで分かった気になってくる。そういう意味では『ファイマン物理学』とか、いきなりスピンを持ち出して来て、読者は2×2行列の計算をしてるうちになんとなく感じを掴んでくる。あれはうまい。あるいはグレッグイーガンのサイトにある量子サッカーのJAVAアプレット。あれもいい。
「物理学は量子力学を使うことに関しては非常に成功しているが、理解することに関してはまだまだだ。」という指摘はもっともなんだけど、使わずに理解しよう、というのは無理だと思うね。
ブルース・スターリングの短篇
サイバーパンクな作品じゃないけど、コスモグラートとか超軽量飛行機とかのガジェットはどこかで見たな。トンボ型ってのがイイ。

●黙示録、ヨハネ著?

ゼラズニイ『外道の市』の後書きで黙示録が下敷きになっているかも、と書いてあったので読んでみる。

John さんヤバイ薬でもやってたんじゃないですか?

で何書いてあるのかよくわからないけど、SF的モチーフが満載なので英米のSFで説明無しに使われそうな感じ。例えば「にがよもぎ」という星が落ちてきて水が全部苦くなり人々が死に絶える、とか。
あと、ZangbandでM$クエスト失敗した時のメッセージ、「あなたはまだ額にマイクロンフトの公式ライセンス番号をつけてないようだが、番号をもらわない内はきっと誰もあなたに物を売ってくれないよ。」てのは、サタンの手下の獣が人々の額に666の刻印をして、していない者には物を売ったり買ったりするのを禁じたという話のパロディだったことが分かった。あの悪魔を崇拝する者はそのうち疫病(添付ファイルのウィルス)で滅ぼされる、ということか。