●『賢者の石』 コリン・ウィルソン、創元文庫 ISBN:4488641016 【アマゾン】

「私は人類の進化のヴィジョンを得るためニューマン合金を脳に移植した。しかし人類誕生の秘密に近づいた時、古代人たちが電波を送って私を妨害しはじめた。さらに周囲の人間も古代人の電波で操られ私の命を狙っている!はやく全ての人間の脳にニューマン合金を移植しなければ世界は破滅してしまうのだ!」とか書くとミもフタもないなぁ(笑)。しかしこの本はクトゥルフ小説なわけで、クトゥルフ小説ってのは結局主人公が狂ってミもフタもなくなる。だいたい古代文明とかの証拠も途中で無くしてしまって、もしかしたら幻覚だったのかもしれない、いや幻覚に違いない幻覚でなく真実であったなら私は正気を保っていられない幻覚に違いないのだ、ってことになる。この本もストーリー展開は全て主人公の主観的な悟りや発見からなっているので電波系の人の妄想というオチも可能なところがクトっぽい。
いや、でも内容は電波じゃないですよ。なんか哲学エッセイって感じで著者の思い付きがいっぱい書いてあってなるほどと思わせる部分も多い。シェイクスピアネタはそのへんの素養がなくて楽しめなかったけど。