富士山イマサカ

機材:https://ita.hatenadiary.jp/entry/20180816/p2
クリックで拡大。★は初見。
春先に見つけた表富士のわりと新鮮なシデ材。前日(https://ita.hatenadiary.jp/entry/2024/07/27/000000)はシャシャンボナガタマのついでに見に行くもすぐに大雨となり×。
シデに来るイマサカナガ、ニセウグイスナガを狙って再度出撃です。イマサカは倒木から数十km程度離れたあたりで記録があるし。
と、その前に去年見つけた裏富士のポイントに立ち寄って諸々スイープ。折れた肋骨をかばいつつ。

ツヤナガタマムシ

昨年見つけたバイカウツギ。低いので、生態写真を狙ってみました。しかし光沢があるのと、撮影角度が自由にならないのとで、光がうまく周りません。

スジバナガタマムシ

こちらも割と低いハンノキ半枯れなので生態狙ったけど、幹には来なかったので掬って発見。

ルイスナカボソタマムシ基亜種

ナガタマと違い、枯葉付きの古い枯れ枝からよく落ちる気がします。オスメスで前胸の色が違いますね。

ヒロオビナガタマムシ

去年は半日ハンノキ高所を掬ってようやく1でしたが、今回も同様。去年はメスだったけど今回はオス。写真が揃った。

ヒロオビナガタマムシ 前胸腹板突起オス

ヒロオビナガタマムシ 前胸腹板突起メス


次はシデ

とりあえずハンノキのタマムシを制覇して大満足。肋骨折れてても行けるやーん。
表富士に移動しようと思ったら、結構な時間になってしまった。シデ自体は表も裏もあちこち見かけるので、こっちで掬ってみるか。実は2023年の春先に道路沿いで大規模な伐採があり、シデも切られてた気がするので、それで個体数が増加するなら今年のはず、という目算もあった。

イマサカナガタマムシ★ オス

クマシデをとにかく掬う。んんんん、なんかエリトラがツートンで前胸腹板突起が三叉でないのが入ったぞ!(ツートンでも、三叉ならマサキナガかヒコサンナガ)
iPhoneで撮影しXに早速投稿。もしかするんじゃ!?という意見を頂く。
結論から言うとイマサカでした。ヒロオビ/イマサカの区別がかなり難しいんですが、幸いヒロオビも手元にあったので詳細に比較。この記録(山梨県初)に関しては 『板倉充洋, 2025. 山梨県におけるイマサカナガタマムシおよびタマムシ科甲虫5種の記録. さやばねニューシリーズ ,(57): 32-33.』にて報告しましたが、その記事から引用します。

イマサカナガタマムシは交尾器がより細く,先端部分の角度がより鈍角であることから区別できる.
また、前胸側縁を上から見た時,ヒロオビナガタマムシでは後角付近のわずかな部分を除くほぼ全ての部分が外側に凸になるよう湾曲しており(図3),観察する角度が多少違ってもこの特徴は変化しない.一方でイマサカナガタマムシでは後半1/3程度の部分で直線的,あるいは逆に内側に湾曲していることで区別できる.

東日本ではこれまで静岡、岐阜、栃木で見つかっていました。タマムシ図鑑はこれら記録の前に書かれたので、かなりレアな印象のため★5となっています。しかし今回の山梨の記録の後で神奈川でも記録が出たので、結構ブナ帯ではどこでもいるんじゃないかという気がします。ただしヒロオビと同様、一日中掬って0か1というレベル。


交尾器比較

左がイマサカ、右がヒロオビ

ヒロオビナガタマムシ

イマサカの記載論文には前胸外縁が前角で急に下がる、ヒロオビはそうでない、とあります。なんかそんなきもするけど、微妙すぎて同定には使えない。
ちなみにヒロオビとツヤも山梨初記録。

ウグイスナタマムシ

これもシデから。羽化不全ぽい。あまり見ない青い色なのもそのせいか?

7/31 再出撃

シデにイマサカいるのなら、ニセウグイスもいけるかも!?と再出撃。ひたすらシデ掬います。

イマサカナガタマムシ メス

お、メスがきた!とはいえ、やはり一日に1がやっとですね。


8/2 再出撃

ニセウグイスを狙ってまたも出撃

イマサカナガタマムシ メス

やはりこっちか。

サキナタマムシ

シデから。

サトウナガタマムシ

ミズナラから。

シロオビドイカミキリ

ここはなぜか広葉樹からもシロドイが落ちるんですよね。かと思えば針葉樹からドイの変なのが落ちたり。

8/11

さらに出撃。掬ってみましたがこの日は入らず。さすがに終了でしょうか。

ハイイロツツクビカミキリ

晩夏でも見られてシデにいるとのこと。まさにクマシデから

ブドウナガタマムシ

シデとか、ブドウ系から比較的よく見つかります。
前胸腹板突起が三叉なのでニセウグイス探してるときは注意。目が大きいので分かりますが。


ベニナガタマムシ

平地で見慣れた色とは違うので同定に時間がかかった。

出現時期

上記短報告を執筆した時、以下のような文も書いていたのですが推測が多いため割愛しました。ここに載せて供養します

一般に、昆虫の出現時期は有効積算気温によっておおまかに予測することができ、例えば北米で大きな被害をもたらしているアオナガタマムシAgrilus planipennis Fairmaire, 1888 では一日の最高気温と最低気温を足して2で割った値が摂氏10度を越えた場合に越えた分を日ごとに積算していき、これが250になった日に羽脱が始まり、550になる日が発生のピークであると推測されている(MacDonald B.,Baydack R., Westwood A.R., Walker D., 2022)。
イマサカナガタマムシに同様のモデルが適用できると仮定し、有効積算気温を評価した。体長がアオナガタマムシより短いことから、出現およびピークの閾値はより小くなると予想される。一方で成長の下限温度は様々な昆虫に対し一般に摂氏10度から15度の値が用いられることが多い。おおよそアオナガタマムシと同様の標高帯に棲息する本種について、同じ下限温度10度を用いて評価した。
採集地点から約5km離れている河口湖での2024年の日別の気温が気象庁で公開されているが、それを元に標高100mごとに0.6度気温が下るという近似を用いて採集地点で本種を採集した日の有効積算気温を計算すると、688~757となった。また2024年6月21日に250に達し、同年7月19日に550に達している。このことから、2024年は7月中旬以前に発生のピークに達していた可能性が示唆される。
また、大分県湯布院町での記録(大桃・福富,2013)について、同様に湯布院での気温を元に11.VII.2004の記録について有効積算気温を評価すると、採集地点の標高を700mとした場合に290,800mとした場合に258となった。
MacDonald B., Baydack R., Westwood A.R., Walker D., 2022. Predicting emerald ash borer adult emergence and peak flight activity in Winnipeg, Manitoba, Canada. Frontiers in Ecology and Evolution (10): 846144.