鳳凰山

Canon EOS Kiss X5+TAMRON SP 90mm VC USD

  • ストロボ:絞り優先モードF11〜F13、露光1/200固定、ストロボ+2、ケンコー影とり、ISO-AUTO
  • 自然光:マニュアルモードでF8〜F16、露光1/125〜1/1000、ISO-AUTO

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背景

自分の関東甲信エリア未撮影カミキリListにずっと居座り続ける、ホソムネシラホシヒゲナガコバネカミキリ。南ア全域に棲息していると考えられますが、鳳凰山以外での記録は非常に少ない。去年は北岳で狙ったものの雨で不戦負。
やはり鳳凰か、と覚悟を決めました。Genkaさんの採集記(http://tokyoinsects.web.fc2.com/activity2009/houou090726.html)を読んで、いつかは行かねば、と思っていたのです。今シーズン終わる頃には50歳になるので、行くなら40代だな、と。♪49歳の夏だから〜
鳳凰山でのターゲットは三種。

  • ikedai:ホソムネシラホシヒゲナガコバネカミキリ
  • tsukamotoi:タカネヒメハナカミキリ
  • suzukii:シナノヒメハナカミキリ
  • ダメ元でオトメ

去年行った北岳(白根御池)ではこれに加え、ミヤマドウボソ、ワルサワダケヒメハナ、ホクチチビハナ、シンシュウヒメハナ、パキタ、ゼブラをターゲットに加えていましたが、ミヤマドウボソ、ワルサワを撮影。今年になってホクチチビハナ、シンシュウヒメハナをよそで撮影。ターゲットを絞れました。PとZに関してはまたよそで狙う。二日で3つ全部見つかるとは思わないけど、翌週に鈴木・塚本が狙える八ヶ岳に行くバックアッププランを策定済み。この2つに関しては「見つかればもうけもの」というスタンスで挑むことができる。

鈴木 Pidonia (Pidonia) suzukii

池田、塚本に関して詳しくはGenkaさんの採集記を読んで頂くとして、鈴木について。主に南ア、八ヶ岳の1800m以上のエリアに棲息している、黒い部分の多いピドニア。前胸の形状が独特。記載は1982年で、記載論文はなんとか先生退官記念論文集に掲載。科博とかに複写依頼しないと入手できない。また著作権の問題で論文の半分以上は複写できない。まあ記載論文じっくり読まなくても同定には困らない。タイプ産地のデータだけ複写で手に入れた。

塚本 Pidonia (Pidonia) tsukamotoi

1957年に塚本珪一氏により仙丈岳で採集され、20年経った1978年に新種記載されたが、標本が1オス1メスしかないため変異個体ではないかとの疑義もあったという。そして翌年1979年に山梨の八丁平にて再発見される。訪花せず、置いていたビーティングネットについていたり、ピットフォールトラップに入っていたりと、かなり独特の生態を持ち、それが再発見されなかった理由であると思われた。この再発見が1982年に甲虫ニュースに掲載され、1984年には鳳凰小屋でも発見される。たまたま報文が載った月刊むしを持っていたが、それによると干した布団や壁についていたそうな。ちなみに1984年はヤンバルテナガコガネが発見され、その生態からの推測でヒラヤマコブハナがウロにいると分かるなど、レアな甲虫の生態が続々と判明した年であった。その後も鳳凰小屋の細田さんふくめカミキリ猛者たちが生態解明に挑み、月刊むしだけでもNo. 166 190 178 140 217 262 263 202 227に記事がある。去年は八丁平に行ってみたがヌル。http://d.hatena.ne.jp/ita/20170715/p1

池田 Molorchus ikedai

1984年の記載時にはMolorchus minor ikedaiとして記載。つまり主に北海道に棲息するミノールことシラホシヒゲナガコバネカミキリの本土亜種という分類だったが、2007年の東海大学の図鑑では独立種Molorchus ikedaiに昇格。和名命名時は亜種だったので○○+基亜種名とするのが妥当で、そのため日本で二番目に長い和名となった。今ならいっそイケダヒゲナガコバネにしてもいいと思うんだが。最初の記録は南ア両俣(1981年7月19日 池田清彦・山上明・鈴木和利・岩田隆太郎)となっている。ikedaiの池田さん、suzukiiの鈴木さん、iwatai(カスガエゾトラ)の岩田さん。

兵站

韮崎7:10のバスで登山口へ。御座石と青木、どちらへもバスで行けるが、今回は鈴木の記録のある燕頭山を通りたかったので御座石ルートを往復。韮崎で前泊したが、駅前に何もないので甲府で泊まるか野宿するかして、朝JRで移動しても間に合う。甲府駅は登山者用の野宿スペースがあるし、あずさも止まる。電車往復6000円くらい(帰りにあずさ指定とれず普通列車)前泊5000円、バス往復3400円、鳳凰小屋一泊二食8000円。
備品備忘録(一泊):着替え一日、雨具、下界用ビーサンカロリーメイト4箱、水分3L、タブレット(オフライン地図GPS導入)&モバイルバッテリー、ヘッドランプとペンライト、予備電池、採集&撮影用具、ムヒアルファ、地図。命に係わる物以外は省いた軽量装備で、おそらく水込み竿ぬきで10kg以下。9m竿を担いでも登山に支障ないコースだった。

登山者スペック

川苔山に鳩ノ巣から1000m登って降りて特に筋肉痛もない程度。今回は標高差1300m、エアリアタイムは5.5時間。無駄にスイープしながら稜線を歩いたので小屋に着いたら足がつりかけた。

御座石鉱泉(1080m)〜燕頭山(2105m)

御座石ルートは整備されていて特に危ない場所はない。ブナ帯でいい感じの立ち枯れやカツラ巨木なども多いけど登りは見ている余裕なし。水分節約のため鼻で息して口開けず呼吸できるペースを保つ。約三時間で到達。エアリアタイムは三時間半。スズキイ探すも花が少ない。発見できず。ここまででほぼ標高差は稼ぎ終わる。

燕頭山〜稜線

ガスが出てきて涼しくなった。花はほとんど無い。立ち枯れ、倒木は多かったけどガスのためカミキリの雰囲気なし。
2000m越えるといつも高山酔いっぽくなることを思いだし、ためしに口で息してあくびもたくさんしたら大丈夫だった。

稜線〜鳳凰小屋(2380m)

小屋の周辺だけシシウドやセリなど花が非常に多い。後で細田さんに伺った話では鹿を追い払っているからだとか。他の場所ではみんな食べられたらしい。長竿もって宿泊手続きすると、スタッフの方が「虫屋さんですよ〜」と細田さんを呼んでくれました。スズキイを狙ったけど取れなかったこと、イケダイとツカモトイを狙いに来たことを伝えると、イケダイがほぼ終わりだという衝撃の事実を教わる。ガビーン。最近ではだいたい7月中旬くらいがメインのようだ。周辺をしばらく散策。

クモマハナカミキリ

たくさんいる!これは少ないほうのオレンジタイプ。

クモマベニヒカゲ

これもたくさん!というか他の蝶を見てない気がする。もう別世界ですね。

ダブル!!

ワルサワダケヒメハナカミキリ

標高2400m近いのでこれが多い。


ホソムネシラホシヒゲナガコバネカミキリ★

しばらく散策して見つけられなかったが、発生ポイントを教えていただき、なんとか1exだけ発見。危なかった!塚本、鈴木はまだ他にも車横付けで探せる場所があるが、池田はそういう訳にはいかない。
なんでも乾燥したシラビソなどの材を好むそうで、なかなかそういう倒木はフィールドにはない。ピニボラやミノールはカラマツ材が積んであればぶんぶん来るイメージなんだけど。

比較用:北海道のシラホシヒゲナガコバネカミキリ

比較用:ピニボラことオニヒゲナガコバネカミキリ
オニヒゲナガコバネカミキリ

中川「全部同じじゃないですか!?」本田「ちがいますよーっ」両津「これだからしろうとはだめだ!もっとよく見ろ」

  • イケダイ、ミノールはピニボラに比べ上翅の逆ハの字の角度が狭い
  • イケダイはミノールより前胸が細い

さらに散策

細田さんに無事1つ見つけたことを報告。塚本が活動する夕食後に場所を教えて頂けることに。ワクワク。それまでさらに散策。

倒木

枯れ葉付きの割と新しいシラビソ。

ハイイロハナカミキリ

これがいた。更にシロオビドイなどを狙って枯れ枝をビーティングしてみる。

タカネヒメハナカミキリ★

うおおおおおおおおお!
うおおおおおおおおおお!
塚本おおおおおおおおお!
とれてしまったああああああ!

捕獲後撮影。上翅斑紋はオオヒメハナとかキベリクロに似ているが前胸が黒いしサイズが小さい。似たのはいない。

夕食

名物のカレー、おかわり自由。ごちそうさま。「ツカモトイ取れちゃいました!」と写真で報告。喜んでいただけた。夕食後に細田さんのポイントを教えて頂く。なるほどー。薄暮の中、スイープしてみる。しかし気が抜けたせいか、ヌル。

ミヤマルリハムシ

スイープで入る。青い。

細田さんにカミキリのお話を聞く。先週は風に飛ばされたオトメが取れたそう。さらにパキタも。なんと〜。
オトメはハイマツの花にいるんだろうけど、ほぼ特別保護区。でも写真ONLYの自分なら狙えるので明日のターゲット決定。

Day 2

3時頃からご来光狙いの登山者が動き始めて目が覚める。4時過ぎに明るくなったので朝食の5:30まで塚本を狙ってみる。気温が低くても狙えるそう。しかし、やはり気が抜けたせいかヌル。ダケカンバの立ち枯れなんかも見てみるがいない。朝食後、地蔵ピストンで行くと細田さんにお伝えし出発。

観音岳

めっちゃ天気よくてガスもなし。こんなコンディションそうそうない。

ハイマツ

そして花もバッチリ!こんなコンディションそうそうない。7:30くらいから8:00まで同じ群落で張り込み。クビナガムシが2〜3匹。そのうちピドニアも1匹来る。しかしどうなんだろ、こんだけピーカンならオトメは8時でも出てるんじゃないか。他の群落も見るために移動。

北岳

右下の白い点が白根御池小屋。去年はここに泊まり、稜線に出て画面中央くらいまで登った。ハイマツだけになったので頂上は無視して引き返した。

地蔵岳

鳳凰三山の一つに到着。

地蔵岳オベリスク

一番高いのはこの岩の頂点だけど、そこに行くにはザイルワークが必要。行かなくても登頂したとみなされる。手前に写るのはいい感じのハイマツの花。ここに来るまでいくつか咲いているハイマツを見てみたがオトメは見つからず。あとは下るだけなんでこれが最後のハイマツ。しかしここでもオトメ見つからず。そのうちガスってきた。時間は10:00くらいか。


下山

小屋まで下山。昨日のツカモトいた倒木あたりでもう一度探してみたがヌル。
下りでもスズキイを探そうと思い、11:00に下山開始。オーナーとスタッフの方々にご挨拶。今度来るときは電話で虫の状況を聞いてから来なさいとアドバイスをいただく。ありがとうございます。

天然カラマツ

稜線上で立派なテンカラがあることに気が付いた。なんか貫禄あって、「ふぉっふぉっふぉ、よく来たの」とか喋りそう。こういう木が本来の生息環境であるカラマツカミキリが見つかったらうれしいな〜、と探してみる。枯れてない巨木につくカミキリって、なんかロマンじゃないですか〜。

カラマツカミキリ

おおー!いた!


燕頭山

時間は昼過ぎ。数少ない花にはオヤマばっかり。心が折れる
更に下山。登りでは掬わなかったノリウツギを掬うと、次第にオオヒメハナとかニセヨコモンとかニンフとか、お馴染みさんが増えてきてテンション下がる。下りでモモがパンパンだけどミズナラのウロとかカツラ大木なんかも見てみるが発見なし。おまけに標高を下げるとともに気温がグングン上がる。
トロトロと下山し御座石に到着。時間に余裕をみたので17:15のバスまでには一時間ほどある。温泉でコーラ買ったらサービスで桃をいただきました。うまかった。

総括

40代最後の夏に念願の鳳凰山、イケダイ、ツカモトイ。何も付け加えることはございません。