ダイマー法のざっくりした説明

A dimer method for finding saddle points on high dimensional potential surfaces using only first derivatives, G Henkelman and H Jónsson, J.Chem.Phys. 111, 7010 (1999).
院生の方に原論文を解説してもらいざっくり理解したのでその説明。

「峠点 saddle point」を見つける計算手法です。たとえば小仏峠。右は影信山、左は城山、手前が東京、向こうが神奈川です。昔は甲州街道がここを通ってました。いまはトンネルで、渋滞名所ですが。
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山を越えるのにいちばん楽なルートはどこか。標高だけ考えれば、歩いていて一番標高が高くなる場所が、なるべく低いほうが楽です。一番高い場所が一番低くなる地点。最大の最小を求める問題です。単純な最小(盆地の底)を見つけるのなら玉を転がして落とせばいいだけですが、峠を見つけるには工夫がいります。

この最大の最小という考えは他にゲーム理論において重要な概念となります。ある手を打ったとき、相手がそれに対応して一番有利(=こっちに不利)な対抗策を打つことを考え、その場合の損害を一番小さくする、つまり損害の最大値を最小にするような自分の手を選べばいい、というのがゲーム理論の基本的な考えです。例えば米ソがプレイヤーで、核攻撃するか、しないかというゲーム。しない場合の最悪のシナリオは相手に一方的に攻撃されて自分だけ滅亡すること。一方攻撃する場合は世界が核の炎につつまれ全滅するのが最悪。どっちがマシかというと、負けより引き分け、と考える馬鹿なら核のボタンを押すことになります。実際ゲーム理論創始者であるノイマンは今すぐにでも攻撃しろと騒いでたそうですが。以上余談。

峠というのはある方向にそって動くと一番高くなる点だけど、それ以外の方向では最低になる点。なのである方向だけ特殊なことをして、それ以外は坂で玉を転がすようなことをすればいい。
ダイマー法では、まず棒切れを転がす。中心が動かないようにして回転だけするようにする。そうすると、谷筋の登山道であれば棒は登山道の方向を向く。そっちに向かって登っていけばいい。棒の方向以外には動かしてもいい。たとえば登山道から横にずれてちょっと斜面をのぼっちゃった場合は、ずりずり滑って登山道にもどる。そうやって棒を回転させてその向きにすこし歩き、また同じことを繰り返す。すると谷筋の道からはずれないまま、もうこれ以上登れない、という所にやってくる。数学的にそれは峠点。

ちなみにダイマーというのはディオに「かかったなアホが!」と言って粉砕される波紋使い