「月刊むしSupplement タマムシチェックリスト」を見ていると「クロナガタマムシ対馬・大陸亜種」の文字が!うわ!対馬でたくさんクロナガタマムシ見たのにあまり写さなかった!と思ったのだけれど、調べてみると単純な話ではない模様。ここで亜種と呼ばれているのは、保育社の甲虫図鑑で「寒冷地で前胸が赤くなる」と説明されているタイプのもの(両方の図が載っている)。以下のPDFの Fig.14 に分布図がある。クロナガタマムシ自体は日本、中国、ロシア、ベトナムなどに広く分布し、大陸でも日本でも北の方で胸が赤い亜種 melanopterus が分布していて、対馬もmelanopterusになる。
http://www.zoo.sav.sk/jendek/myweb/PDF/10.pdf
このmelanopterus については1995にJendek氏が地域変異であるとして亜種を抹消。1997のタマムシチェックリストでは亜種として復活、2000にJendek氏は方針を変え亜種として認めている。
- すごく昔の論文 http://coleoptera.sakura.ne.jp/TKCS/TKCS02-01.pdf
- 1995 Entomological Problems, 26 (2): 137-150. http://www.zoo.sav.sk/jendek/myweb/PDF/4.pdf
- 1997 月刊むし (Supplement 1) タマムシチェックリスト
- 2000 Entomological Problems, 31 (2): 187-193. http://www.zoo.sav.sk/jendek/myweb/PDF/10.pdf
どうなんですかね。柏の葉で胸赤タイプもそうじゃないのも撮っている。クヌギ・コナラというどこにでもある木がホストだから本州でははっきりした境界が引けず、どっちつかずの個体が出てくるはず。
柏の葉その1
柏の葉その2
でもたしかに対馬では胸赤タイプしか見なかった。対馬の胸赤タイプは生殖隔離されてるからはっきり定義できるということ?
赤タイプが寒冷地に強いとかいう性質があれば、交雑地域はあってもだいたい境界は定義できるのかな。
んー難しいけど、とりあえず福島あたりの土場いけばいつでも見られるということで安心した。
コナラは特にシイタケほだ木として国内で多く流通しカミキリの分布拡大の原因となっている。国内で対馬特産だったハラアカコブは埼玉でも定着した。クリストフコトラの新産地のいくつかもおそらくこれだろうね。そういう人為的拡散と温暖化とで今後本州での胸赤タイプの分布が微妙に変わったりもするかもしれない。