グレッグ・イーガン "Riding the Crocodile"

作者のページで公開されている中篇
http://gregegan.customer.netspace.net.au/INCANDESCENCE/00/Crocodile.html
はるか未来、銀河系に棲息する複数の知的種族は「アマルガム」という連合を作り、お互いに行き来していた。種族間の文化の違いよりも、種族内の文化的多様性の方がスペクトルが広いので、同じ興味を持ったさまざまな種族がコミュニティを形成していた(このへん今のインターネットですね)。その気になれば自分を信号に変換し、銀河の反対側へ送信して向こうで肉体を作ってそこに自分をインストールすることも可能。でも光速は越えられないので何万年もかかるし(しかし主観的時間は0)、帰ってきたら親戚友人はだいたい生きるのに飽きていなくなっている。
銀河は征服しつくされているけど、中心部だけは謎の種族 "Aloof" がいて、あらゆるコミュニケーションを拒否している。探査機も全て送り返され、記録が抹消されている。人工的活動を示唆するスペクトルも一切観測されない。
主人公は結婚して1万年の老夫婦(ローレンシウム婚式とかするんだろうか)。もうやることやりつくしたんで、死ぬ前に何かすごいことやって死のうと決意、この Aloof の謎を解こうと決意して銀河中心部へ向かう。死ぬ決意してるんで、結構無茶する。そして長年の研究の末、ある手がかりを得る…

なんか今までのイーガンとかなり違います。話の骨子はディアスポラとシルトの梯子(未訳)にかなり似てるけど、それらから難解な理論の部分をバッサリ落として、「普通の」ハードSFになってます。妙な宇宙人たくさん出てくるし、主人公は仲のいい老夫婦だし。数理オタ以外でも楽しめる作品になってます。
イーガンは今後こういう路線に行くんだろうか。同じ世界設定の長編も書いてる途中のようだし。