普通

五次元惑星の極

地球のような三次元の惑星の表面(二次元球面、2-sphere)だと、自転したとき動かない場所というのは点二つで、北極点と南極点です。これは0次元の図形、ということになります。五次元空間だと、単純にすべて次元を2足せば、星の表面は四次元球面で、惑星表面上で動かない空間はニ次元、てことになりそうです。実際作中ではそう書いてあります。しかし実はこれ、あまり正しくないです。
回転てのは、二つの方向、たとえば南北と東西、をぐるぐる入れ替える操作、と言えます。東西→南北→西東→北南、という感じで。東西と上下、にすれば太陽の動きになります(ちょっとずれてるけど)。五次元だと方向が5種類(上下、左右、前後、シニスター-デクスター、ゴーシュ-ドロイト)あるんで、上下と左右のペアで回転し、前後とシニスター-デクスターのペアも同時に回転させる、てことができます。そうすると回転で変化しない方向はゴーシュ-ドロイトだけになり、球面上で動かないのは地球と同じく二つの点だけ、ということになります。ただし、どちらかの回転の速度が0、つまり回転してなければ作中の設定通り動かない場所は二次元になります。
このへんは作者もHPで解説してます。 http://www.netspace.net.au/~gregegan/DIASPORA/17/17.html

ネタバレ:U**

『双対空間』の数学的な定義はキーワード解説を参照してください。このストーリーでの双対変換は、横書きの文章を縦読みしたら新しい文章が出てきた、て感じの話です。横読みの宇宙U から、行の頭を縦読みする宇宙U*へ行って、行を移動してまた横読みに戻ると並行宇宙の別の宇宙Uへ行けますが、これは勝手にはできないようです。数学的な双対空間の場合、2回やったら元にもどります(U** = U)けど、この本でU**といってるのは違うものです。U**≠U。縦読みのU*から、さらに縦読みの一行目を1ページずつ読むと更に新たな文章が出てきて、これをU**と呼んでるようです。だからU**は四次元とは限らないけど、「幸運にも」U**は四次元だとオーランドのクローンは言っています。しかし同じ四次元でも、物理定数とかは違う可能性もあるんで、我々の宇宙とはかなり違う可能性もあります。
「上の宇宙」へ行く装置は作れるけど、「下の宇宙」へ行く装置は作れないようです。ただし下の宇宙から来るときに使った道を残しとけば戻れるようです。もし自由に下の宇宙へ行く道を作れたら、U*へ行って特異点を一旦消し、同じ場所に再度特異点を作って U への出口を前と違う場所に作るとワープやらタイムトラベルやら出来てしまいます。そうするとストーリーが破綻してしまいます^^;

1の分割 (Partition of Unity)

数学用語。http://mathworld.wolfram.com/PartitionofUnity.html
ものすごくグニャグニャ曲がった二次元世界があって、ここに京都の「烏丸三条」みたいなやりかたで番地を付けたいとします。ぐにゃぐにゃしてるから、どこかで三条と四条が交わったりするんで全体に一つのやりかたで番地を付けることができません。そこで全体をたくさんの「概ね平ら」なツギハギで覆い、それぞれのツギハギで碁盤目のような番地を付けて境目ではうまくつなげるということをします。これが1の分割。