Phys.Rev.Lett.に載ります

"Novel Cross-Slip Mechanism of Pyramidal Screw Dislocations in Magnesium"

月見だんごみたいに、球をたくさん積み重ねて遊びたい、と思ったことはありませんか。やってみると面白い発見があります。
上の図で左がいちばん綺麗に積み重ねる方法です。三角形でできた面と、四角形でできた面が見えます。金、銀、銅、アルミなどの柔かい金属はどれもこれと同じように原子が並んでいます。三角形でできた面はなめらかなんで、この面をさかいに原子がヌルヌル滑ることができて、そういう面が4つもあるので自由に変形できるのが柔かい理由です。四角でできた面が3つありますが、こちらはデコボコしていてあまり滑りません。
右の図は、違う積み重ねかたをして、三角と四角が交互にでてくるようにしたものです。上の面は三角だけで平らですが、他は若干デコボコしています。マグネシウム、チタン、ジルコニウムなんかはこのような原子の並びになっています。金とかだと斜めの面は平らなのが3つ、デコボコが3つでしたが、こちらはその中間の面が6つ出来ています。上の面はヌルヌル滑るけど、他の面は滑りにくいので金などより変形しにくいです。
例えばノートパソコンなんかは軽量化のためにマグネシウムをボディに使っていますが、これを板をプレスして作ろうとすると割れてしまうので、鋳型に溶かした金属を流して作るしかなく、手間がかかります。もしマグネシウムやチタンの板をプレスして部品を作れるようになれば、特に車なんかでかなりの軽量化が期待できます。ジルコニウム原子力、チタンはジェットエンジンで重要。
金属にいろいろ混ぜ物をすると、この斜めの面が滑りやすくなって変形しやすくなることが判明し、最近その機構が盛んに研究されています。始めにその話を聞いた時は三次元的にそういう面を想像できなくて全くイメージが掴めませんでした。なので実際に玉をダイソーで買ってきて積んだり、CGで描いたりしてなんとなく感じが分かってきました。混ぜ物うんぬん以前に、この斜めの面の滑り自体が良く分かっていない状況だったので、いろいろ計算してその結果をCGで可視化したりしているうちに、いろいろなことが分かってきて、これまでの常識から外れた振舞いを発見することができました。


特に微妙なデコボコを三次元的に把握するのが重要だったので、それが良く見えるように自前のCGプログラムを作って絵を生成しました。奥まった場所というのは周囲の環境から届く光が少ないので暗く見えます。玉の上の各地点に小人さんに立ってもらい、そこから空がどの程度邪魔されずに見えるかを見てもらいます。その度合によって明るさを変えるようにしてます。まじめに計算すると時間がかかりすぎる(画素数×玉の数×視線の数)ので、描画の際に使うZバッファというのを再利用してインチキしてます。
http://d.hatena.ne.jp/ita/20100308/p1

n原色視覚

かつて掲示板にこんな投稿をしました
http://njb.virtualave.net/nmain0153.html
http://njb.virtualave.net/nmain0154.html

お邪魔します。以前のださんの掲示板(過去ログ)で話題になってたのですが、突然変異によってLとMの錘体がモザイク状になった
網膜を持ったサルが初めて出現したとき、(http://www.nig.ac.jp/color/barrierfree/barrierfree1-4.html)どんな風に色を認識していたのか興味深いです。
個体の学習によって一世代でも新しい色覚を獲得できるのか、何世代もかかって脳のほうもそれに対応できるよう進化するのか、どちらなんでしょう。
というのも、前者であれば人間にも第4の錘体を持つ眼球を移植すれば何年かすると四原色が認識可能になるということになるからです。
そうすると芸術の世界とか大混乱になりそうです。四原色派、五原色派とか、人間本来の色にこだわる三原色派とかできて対立するとか、イーガンの作品に出てきそうなシチュエーションです(もしかして未訳の作品であったりするかもしれませんが)。

そんなイーガン作品が今月のSFマガジンに掲載されました。タイトルは『七色覚』
ちょっと前に四原色の視覚を持つ女性の画家が話題になりました。そのあたりから着想を得たのかも。通常の人より日影の色彩に敏感になるそうで、絵の購入者や弟子がそれに気づいて本人に話し、検査したところ実際にそうだと判明したようです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Concetta_Antico

追記

コメント欄で関連記事を教えて頂きました。有難うございます。いろいろな変異があるようですね。

星の対称性


てっぺんの星は<100>方向に6、<111>方向に8本に腕があり、見上げる場所が丁度<111>方向に一致すると6回対称に見えるよう腕の長さが調節してあります。


こちらはあまり対称でない。六方晶の対称性。<a>=<2 -1 -1 0>方向に6、<c+a>=<2 -1 -1 3>方向に12の腕がある。

ケプラーさんの作品。Icosahedral symmetry
http://www.georgehart.com/virtual-polyhedra/kepler.html

馬鹿な仮定を真面目に計算

ホワット・イフ?:野球のボールを光速で投げたらどうなるか

ホワット・イフ?:野球のボールを光速で投げたらどうなるか

作者のお膝元ボストンの本屋で平積みになってたのを立ち読みし吹いてしまった本。作者は知る人ぞ知るxkcdの作者。作者HPで早川から翻訳が出ると書いてあったんですが、出ましたね。
こちらで一部を読めます
http://honz.jp/articles/-/41525

戦艦大和を一日に何隻作れるか

「艦これ」ネタです。現在、艦これで大和や武蔵を入手するには大量の資源を投入していわゆる「ガチャ」をまわす必要があります。大和や武蔵ができる確率はざっくり10%程度。一回に必要な資源は燃料4000/弾薬7000/鉄鋼7000/ボーキサイト2000。
放置していくと一日で四種の資源は1440/1440/1440/480回復するので、まあ5日放置すれば一回分の資源が貯まります。任務とかマメに達成して資源を増やすと3日に一度程度。

資源をさらに増やすには、「遠征」を使います。一定時間後(遠征により20分〜数時間)に一定量の資源を持ち帰ってくれます。遠征以外で一日に貯まる資源rの量を建造一回必要資源で割った数をCr、遠征iで一時間あたり得られる資源rの量を建造一回必要資源で割った量をGirとします。遠征iを一日Ti時間行うとすると、資源rは建造 Cr+Σi Ti Gir 回分だけ貯まります。これをNrとおきます。Nrのうち4資源で一番小さい値が一日に建造できる大和の数。これを最大にする問題。
常識的に考えて、最適解ではNa=Nf=Ns=Nb (a弾薬, f燃料, s鉄鋼, bボーキ)となっているはず。
さらに0<=Ti<=24という条件がある。また遠征は同時に3つ出せるので、フル稼働させるとΣi Ti=24*3となっているはず。
この条件で例えばNaを最大にする、という問題を解けばいい。条件は全てTiの一次式なので、これは線形計画法(Linear Programming)と呼ばれる、よく知られた問題で、エクセルで解く方法がググると出てくる。
実際問題、効率がいい遠征はID 2,3,5,6,21,37,38あたりに限られるので、7変数程度の問題ならPCですぐ答えが出ると思われる。
ただし遠征3なんかは20分に一度、PCを操作して送り出す必要があり非現実的。かりに実際やったとして、bot操作だと判断されて垢BANの可能性がある。

「白熱光」解説記事

SFが読みたい! 2015年版

SFが読みたい! 2015年版

「SFが読みたい2015年版」に短い記事を寄稿しました。冒頭はこんなかんじ

「白熱光」の偶数章では、我々の世界の物理学とは違う視点でニュートン力学相対性理論などが展開されますが、こちらの世界の物理学とどう対応するのかはあえて説明がありません。こちらの世界の物理学に挫折した人も、リフレッシュして別の視点で虫さんたちと一緒に物理に再挑戦しよう!といったノリでしょうか。本稿では、こちらの物理学との比較を行って、作中で何が進行しているのか種明しをしようと思います。

(1)初級編:ニュートン力学
物理を勉強すると最初に出てくる力学。基本中の基本ですが直感的に理解するのは意外と難しいものです。例えば、「力が働かない物体は同じ速さで運動し続ける」という慣性の法則。現実世界では路面の抵抗などがあるので、人間は普通、動いている=何かの推進力が働いている、と経験的に考えてしまいます。ディズニーランドのスターツアーズでは宇宙船が発進すると床が小刻みに振動しますが、車に乗っている時の経験から宇宙船が前進しているように錯覚してしまいます。しかし宇宙空間で一定速度で前進している場合はエンジン推進は不要なので、宇宙船の中では外の空間に対して静止しているのか動いているのかは分かりません。

続きは紙で!

前野[いろもの物理学者]昌弘さんには草稿を読んでいただきアドバイスを頂きました。ありがとうございます。